●漫画家に挑戦した理由は「食べていくにはいいだろうと思ったから」

猫なで写真
仕事机の足元にはごく低い椅子が。「床で寝ている猫をなでるのに、低い椅子じゃないと手が届かないから(笑)」
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レギュラーの仕事をもらえるイラストレーターとして活躍していたのに、漫画家に挑戦したのは?
「そのほうが食べていくにはいいだろうと思ったから(笑)」

漫画家もイラストレーターも、あくまでもフリーランス。仕事も収入も何の保証もありません。
「どちらも絵を描くことに変わりはない。ただ、漫画にはストーリーが必要です。小説はよく読んでいたし、絵は描ける。じゃあ漫画を描いてみようと。ところがやってみたら、予想とは大違いで(笑)。どうにかこうにか、やっと描いたのがデビュー作の『ダリア』だったんです」

齋藤さんを選出した、漫画賞の審査員はそうそうたる顔ぶれでした。
石ノ森章太郎さん、小池一夫さん、さいとう・たかをさん、ちばてつやさん、白戸三平さん、横山光輝さん。まさに日本の漫画界のレジェンドばかり。ご本人は苦労したとおっしゃいますが、こうしたレジェンドたちから評価されて、デビューしたのです。

●今は、高齢者のリアルな日常を描いています

バルコニー
7階の角部屋だからこそのバルコニー。使わなくなった事務椅子を置いて、アウトドアリビングに。商店街でもらってきた植木が今年も花をつけました

『ぼっち死の館』は、キラキラとした少女漫画ではありません。登場するのはごく一般の中高年ばかり。シワもシミもそのままに、着ているものも毛玉のついていそうなセーターや、ゴムのゆるんだソックスや健康サンダルだったりします。

「団地で暮らしているのは、私を含めてこんな人ばっかり。それが当たり前の風景だし、生活ってもんでしょ? デパートにでも行くならともかく、ゴミ出しするのに、オシャレする人はいないわよね」
作中では、救急車の音がすれば「だれか倒れたな?」と思い、顔見知りに会えばだれかが入院した、亡くなった、という話題になり…。

「それが高齢者の日常です。だれだって年を取るし、年を取ったからといって、人生は続いていく。いや、続けていくよりしょうがないじゃない? 生きてるんだもの(笑)」

団地の7階の一室から、足もとに広がる世界を、齋藤さんは今も、漫画家の視点から見つめ続けています。