●飲食店は「舞台」。別の人生を演じてみるのも手

――初めて訪れたお店だと、居心地悪さなど感じてしまう場合もあるかと思いますが、そういうときはどうしたらいいでしょうか。

稲田俊輔さん
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稲田:「このお店合わないな」と思うということは、そのお店の個性が強いということでもあるので、思わぬ発見があるかもしれません。チェーン店では味わえない、“クセ”の強さや、心に残る感じをポジティブに楽しんでみてください。もしかしたら、怖そうな店主がふとした瞬間にすごくチャーミングかもしれない。それを発見したらうれしくなってしまうはずです。

あとは自分も「このお店だったらこのキャラでいこう」とか、お店を「舞台」だと考えて、自分が役者的に演じてみるのもいいですね。高級レストランならお嬢さまを気取ってみて、寿司屋なら粋な人、居酒屋ならおおらかな人とか、舞台の一部になりきってみる。そうすると、飲食店ごとに何種類もの人生を生きられることにもなるし、楽しいじゃないですか。

失敗したくないというのは、裏を返すと、あなたはあなたらしくいればいいんだよってことかもしれませんが、相手に合わせるということもなくなってしまう。相手に合わせることはストレスにもなるかもしれないけど、そのストレスを楽しむモードに自分で切り替えることは難しくないと思います。

――コツは、飲食店を自分にとっての「サードプレイス(家庭でも職場でもない場所)」にすることなんですね。

稲田:そうです! 最初はキャラをつくっていても、そこに慣れて素を出していける店も出てくる。自分を出せるような店というのは、一生通い続けるようなお店です。

僕は新しい店を1回だけのために探すことはあり得なくて、今後の人生で自分が通い続けられるお店を一軒でも多く増やすために行くんです。だから、もしかすると自が出せるようになったというのは、お店で演じていたキャラクターの方に自分が変わっていったのかもしれない。

そう過ごしているうちに、どこまでが演技で、どこからが自なのか、区別がなくなっていきます。最終的にはそうやって自分らしく落ち着いて楽しめる店になるし、それがたくさんあると人生が豊かになると思いますよ。