●“人に頼る”ことの大切さを改めて学んだ
すべての画像を見る(全6枚)――貫地谷さん自身も、悩みながら真央をつくり上げていかれたのですね。撮影を終えて、得たもの、気づいたものはありましたか?
貫地谷:認知症への意識は本当に大きく変わりましたね。認知症を患う家族がいたら、やはりなにかと心配だし、常に見えるところにいてほしいから、つい縛ってしまう。それに、認知症になってしまったら本人も家族もいろいろあきらめなければいけないと思いがちですよね。私もそうでした。だから最初は、「本人が望む生き方」を貫けるのはすてきだと思いつつも、心のどこかで奇跡のようなものだとも疑っていたんです。
でも撮影が終わってからは、なにも諦める必要はないんだ、晃一さんの生き方は、奇跡ではなく当たり前の世の中になりつつあるんだと素直に思えるようになりました。厚労省の方からも、今は認知症本人の意思を尊重するのが世界共通の指針になっていると聞きました。まわりの協力があれば、十分実現可能なんです。
真央も、最初は「どうしよう」ばかりだったけれど、いったん深呼吸してまわりを見まわしたら、頼れる仕組みがたくさん見つかりました。ひとりで抱え込まずにいろんなものを頼ったからこそ、道が開けてきたわけですよね。
だから母にもそう伝えてみました。私もじつは、悩みをあまり人には話さない、話せないタイプではあるんですけれど、改めて「人に頼る」って悪いことじゃない、むしろ大事なことだと感じました。
●人生を変えた2つの出会い
――先ほど、「出会い」の大切さを感じたとお話されていましたが、貫地谷さんにも人生を変えた出会いはありましたか?
貫地谷:中学生のとき、今もマネージャーを務めてくれている彼女にスカウトされていなければ、今の私はないです。あの出会いは、ものすごく大きな出来事でした。それと、夫…でしょうか。結婚して今年で4年になるんですけれど、やっぱり人生を大きく変えてくれた存在ですね。
役者の仕事って特殊なもので、実生活がおろそかになりがちだったんですけれど、夫と生活するようになって初めて「ちゃんと生きているな」という実感がもてたというか。そんなに大それたものではなく、スーパーに行って献立を考えたりとか、そういうふつうのことです(笑)
――ご主人のお話をされている貫地谷さんの表情、すごくイキイキしていますね。
貫地谷:うん、楽しくやっていますね。夫は、なんでも話せる唯一の人。本当になんでも話すので、私より私のことに詳しいかもしれません(笑)。撮影や舞台の仕事に入ってしまうとそうはいっていられませんが、ふだんはなるべく夫の休みに合わせて土日は家にいられるよう調整してもらっています。