●『ひょうきん族』に負けたわけじゃない

最終回の803回目のコントは、おなじみの「かあちゃんもの」だった。長さんが和服とカツラで「かあちゃん」に扮して、悪ガキの僕たちがいろんないたずらを仕掛けては、かあちゃんに怒られる。
家に帰ってきた加藤が「おかあさん、ただいま。一本つけろや」って言ってみんなでずっこけたり、僕は「かあちゃん、腹へった。なんかくれよ」って手を出して、長さんに「親に向かって、なんだその態度は!」って竹ぼうきの先でつつかれたり。あのチクチクした感触は、今でも覚えてる。天井から落ちてきた金だらいを頭で受けるのも、この番組では最後なんだと思うとなんか切ない痛さだったな。
よく「『全員集合』は裏番組の『オレたちひょうきん族』に負けたから終わった」っていう言い方をされるけど、僕はそれは違うと思ってる。1981(昭和56)年にフジテレビで同じ時間に『オレたちひょうきん族』が始まって、「土8戦争」なんて言われてた。視聴率でどっちが勝ったとか負けたとかも、よく話題になってた。
ただ、『全員集合』と『ひょうきん族』では、作り方も笑いの方向もぜんぜん違う。『全員集合』は何度もリハーサルを重ねて、細かいところまで作り込んだ笑いを公開生放送で見せる。『ひょうきん族』は出演者が個人のキャラクターを伸び伸びと出して、アドリブも積極的に入れながらスタジオで収録してつないでいく。僕の中では「別のジャンル」の番組で、ライバルと思ったことはない。
『全員集合』が終わったのは、『ひょうきん族』に負けたからじゃなくて、作り込んだ笑いを公開生放送で見せるスタイルが、番組としての役割を終えたということ。だから、さんまさんやビートたけしさんに対して、ヘンな感情なんてこれっぽっちもない。すごい才能だなと尊敬してるし、これからもどんどん活躍してほしいと願ってる。

 

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