今年90歳となった、高木ブーさん。ザ・ドリフターズの一員として知られ、今も舞台やテレビで活躍中です。

高木ブーさん
高木ブーさん(撮影/コタロウ)
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90歳を記念して出版された、『アロハ 90歳の僕~ゆっくり、のんびり生きましょう~』(小学館刊)は、高木ブーさん視点でザ・ドリフターズの秘話や、控えめだけれどいつも自分らしさを貫く生き方が記述されています。同書を抜粋し、高木ブーさんから見た『8時だョ!全員集合』のエピソードを紹介します。

「ドリフのいちばんのファンは高木ブーだ」

ザ・ドリフターズ
ザ・ドリフターズ(「アロハ 90歳の僕」より)

いかりや長介、加藤茶、仲本工事、荒井注、志村けん、そして高木ブー。「ザ・ドリフターズ」の一員であること、素晴らしいメンバーとずっとがんばってこられたことは、僕の誇りです。
自信を持って言えるのは、「ドリフのいちばんのファンは高木ブーだ」ということ。これまでもずっとそうだし、これからも変わらない。

●ドリフのコントの肝は「力関係」と「繰り返し」

1969(昭和44)年10月、のちに怪物番組と呼ばれる『8時だョ!全員集合』がスタートした。1971(昭和46)年の4月から9月まで半年のブランクをはさんで、終了したのは1985(昭和60)年9月だった。
たいへんな16年間だったけど、毎週、あんなに大がかりなセットを組んでコントをやるなんて、テレビが元気な時代だったからできた番組なのは間違いない。それに出させてもらったのはとても幸せなことだと思ってる。
ドリフのコントの肝は「力関係」と「繰り返し」にあった。長さんっていう絶対的なリーダーがいて、ほかの4人のメンバーは押さえつけられてて頭が上がらない。テレビの前の視聴者は、その力関係がわかってる。
教室コントにしても探検隊コントにしても母ちゃんコントにしても、押さえつけられている4人が知恵を絞って、何らかのアクションを「繰り返し」て、最後は怖くて強い長さんがやり返される。それがドリフの黄金パターンになっていた。そして、翌週も黄金パターンが繰り返される。
加藤の「ちょっとだけよ」や志村の『東村山音頭』なんかも同じ。長さんが「やめろやめろ」と止めても、それを聞かずにやっちゃう。止める役がいなくて、加藤や志村が好き勝手に暴走してるだけだったら、あんまり面白くない。
当時は「マンネリ」っていう批判もあったけど、ちょっと違うんだよね。5人のあいだに明確な「力関係」があり、見る側も「繰り返し」を期待して、そのとおりの展開を喜んでくれる。毎週の生放送を長く続けてきたドリフだから生み出せた、図々しく言っちゃうとドリフにしかできない笑いだったんじゃないかな。

●「ウケないこと」が僕の存在意義

「5人いる」というのも、ドリフの大きな特徴であり武器だった。
探検隊のコントで、隊長に言われてロープにつかまりながら川を越える場面でも、僕があぶなっかしいながらもうまくいって、次の仲本はあっさり成功する。そのあとで加藤や志村がヘンなことをしたり失敗したりするから、大きな笑いになる。キャラクターが違う5人でやることで、立体的な話になるんだよね。
僕や仲本がいなくて最初から加藤や志村が出てきて失敗しても、きっとあんまり面白くない。逆に、僕や仲本がヘンにウケるようなことをしたら、そのあとで加藤や志村がウケても、コント全体の面白さとしてはイマイチになっちゃう。
やっているうちにだんだんわかってきたことなんだけど、ウケないことに僕の存在意義があったのかもしれない。