読者から届いた素朴なお悩みや何気ない疑問に、人気作『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社刊)の作者・菊池良さんがショートストーリーでお答えします。今回は一体どんな相談が届いているのでしょうか。
すべての画像を見る(全4枚)ここはふしぎなお悩み相談室。この部屋には世界中から悩みや素朴なギモンを書いた手紙が届きます。この部屋に住む“作者”さんは、毎日せっせと手紙に返事を書いています。彼の仕事は手紙に書かれている悩みや素朴なギモンに答えること。あらゆる場所から手紙が届くので、部屋のなかはぱんぱんです。
「早く返事しないと手紙に押しつぶされちゃう!」それが彼の口ぐせです。
相談に答えてくれるなんて、なんていい人なんだって? いえいえ。彼の書く返事はどれも想像力だけで考えたショートストーリーなのです。
さぁ、今日も手紙がやってきましたよ──。
【今回の相談】運動不足で増えつづける体重をどうにかしたい
おとなになってから運動不足で、体重は毎年増えつづけています。どうにか食い止められないでしょうか?(PN.パニャーニャさん)
【作者さんの回答】霊界電話は4時4分につながる
「霊界電話って知ってる?」
パニャーニャがその噂を知ったのは、友人の何気ないひとことからだった。午前4時4分ちょうどに電話をかけると、その回線は霊界につながり、死者とことばを交わすことになるという。最近、巷で広がっている都市伝説だ。
その死者とはいったいだれなのか? 一説にはその時間に不慮の事故で亡くなったひととのことだった。
パニャーニャはその噂に興味を持ち、自分で試してみることにした。前日の夜から眠らずに過ごし、時間が近づくと電話のまえで待機した。しかし、ほんとうにつながるとは思っておらず、むしろつながらないことを確認するためにやっていたようなものだった。
かたわらに置いた時計をじっと見ながら、パニャーニャは時間が進むのを待つ。じれったく感じながらも、緊張して胸の鼓動がどくどくと早くなっているのがわかった。午前4時2分……3分……さぁ、いまだ。
パニャーニャは受話器を手にとって耳にあてた。そして、ゆっくりと口を開く。
「もしもし」
だが、なにも返事はない。ほっと安心する。なんだ、やはりただの噂だったのだ。霊界につながるなんて、そんなことあるわけがない。しかし、受話器を耳にあてながら、どこか違和感を覚えた。なにかがおかしい。電話が通じていないときはツーと音がするはずだ。いま、なにも聞こえていない。ということは──。