普段食べているしょうゆですが、じつはとても奥が深い調味料なんです。しょうゆメーカーのキッコーマンに、食文化研究家のスギアカツキさんが取材。意外と知らないしょうゆのことを教えてもらいました。
すべての画像を見る(全7枚)意外と知らない?しょうゆの真実
普段の食卓で毎日のように登場する調味料といえば、「醤油(しょうゆ)」ではないでしょうか。煮物の味つけ、洋風料理の隠し味として、寿司はもちろんのこと、焼き魚やステーキを食べる時にも頼りになる存在。めんつゆや焼肉のタレにもしょうゆは欠かせません。嬉しいことに、いまや世界中で日本のしょうゆが広く愛されるようになっています。
そんなしょうゆを、もっとおいしく楽しむことができたら…。そこで今回は、江戸時代初期からしょうゆをつくり続けている老舗企業であるキッコーマン株式会社 国際食文化研究センター長の山下弘太郎(やました こうたろう)さんに、「意外としらないしょうゆの話」を教えてもらいました。“知っておくともっとおいしい”をコンセプトに、6つのポイントをご紹介していきたいと思います。
(1) 多くのしょうゆは、“脱脂加工大豆”からつくられている
現在のような濃口しょうゆがつくられるようになったのは、江戸時代から。それ以来しょうゆづくりの基本は、今日までほとんど変わっていません。しょうゆの主原料は大豆、小麦、そして食塩(塩)。ここで、商品ボトルに記載されている原材料名をチェックしてみましょう。じつは多くのしょうゆに使われている大豆は、大豆そのもの(丸大豆)ではなく、「脱脂加工大豆」なのです。
脱脂加工大豆とは、丸大豆から油を取り除いたもの。うま味が強く、しょうゆづくりにおいて生産効率がいいために、消費者としてはおいしいしょうゆがリーズナブルな価格で購入できるメリットがあります。
一方、丸のままの大豆でつくられる「丸大豆しょうゆ」にも大きな魅力があります。まず風味の点においては、上品で穏やかな香りとまろやかな味わいが特徴。また、油分が含まれている大豆を使うことで酸化しにくく、美味しさを保ちやすいというメリットもあります。さらに、大豆の産地や生産者がわかりやすく、こだわりや安心感を重視する人にはおすすめです。
「丸大豆しょうゆは、大豆の油脂分から得られるまろやかでやわらかな口当たりと深いコク、穏かな香り、深みのある色合いが特長です。色・味・香りのバランスがいいので、どんな料理も引き立てます」(キッコーマン・山下さん、以下同)
(2) 生しょうゆがじつは現代人にぴったり?
大豆の違いよりも、しょうゆの味を左右するのが、「生」か「火入れ」かという違い。最近「生しょうゆ」と書かれた商品が多いと思いませんか? これは通常のしょうゆで行う微生物の殺菌や色・味・香りを整える「火入れ」という工程を行わないしょうゆのこと。調理した時に初めて火が入るので、香ばしさが立ちのぼり、うま味豊かな味わいが楽しめる点が魅力。
最近では開栓後の品質変化を抑える密封ボトルの登場によって鮮度を保ちながらおいしい生しょうゆを味わえるようになったため、ますます人気になりつつあります。煮物などでしっかり深い味わいに仕上げたいメニューには、火入れしょうゆを使うのがオススメです。
「生しょうゆの鮮やかな色、豊かなうま味、穏やかな香りが、現代の方々の嗜好に合っているのではないかと考えています」