「健康のために」と、長く続けている運動や食習慣も、年齢に合わせて見直しが必要です。自分の年齢や身体と、最新の情報を照らし合わせ、いまの自分にぴったりな生活をしてみませんか? 著書『75歳からのラクラク1品栄養ごはん』(扶桑社刊)を出版した訪問管理栄養士の中村育子先生に、75歳を迎えたら知っておきたい食の常識について教えていただきました。
すべての画像を見る(全2枚)75歳からの食生活の新常識。NGなことOKなこと
中村先生は、75歳を超えたら「低栄養」にならないように気をつけることを提唱しています。高齢になると、だんだん食事量が減ってきたり、栄養が偏りがちになったりするそう。なかでも注意したいのが、ダイエットです。人に「太りすぎ」と言われたり、生活習慣病を気にしたりして、体型や数値などを気にしている方も少なくないはず。痩せるために、「一日1食ダイエット」や「食事量を減らす」、「食事は野菜から食べる」などの習慣を続けてきた人もいるかもしれません。しかし、これは75歳以上という年齢に合っていない方法なのです。
●食事量を減らすダイエットは高齢者にはNG!
まず、「一日1食ダイエット」は、高齢者にとっては「低栄養」を招いて健康に支障をきたす可能性がある方法です。もし1食で3食分の量を食べたとしても、栄養素の吸収量には限界があります。そのため、一時的なエネルギー過多になってしまい、健康的な身体を維持することはできません。
また、高齢になってからおこなう「食べない・量を減らすダイエット」は、健康的どころか赤信号です。少食や粗食にすれば、確かに体脂肪は落ちます。しかし、一緒に筋肉量も減ってしまい、運動だけでなく歩行や家事のときなど、普段の生活のなかでの身体機能の低下を招きます。さらに、「◯○だけダイエット」なども、タンパク質の摂取量が減るため、筋肉量はどんどん低下してしまいます。
じつは、85歳以上の女性の4人に1人が「3食食べているのに低栄養になっている」と言われています。低栄養でも痩せればいいと考える人もいるかもしれません。ですが、特に75歳以上の後期高齢者は、低栄養によって体力が低下するだけでなく、感染症やそのほかの病気に対する抵抗力も弱まります。
いくらダイエットができても、病気やケガ、寝たきりの状態になっては元も子もありません。75歳になったら、「低栄養にならないこと」を重視した食生活へと考え方を変えていく必要があります。
●食事はメイン料理から食べる、卵は1日1個以上食べてもOK!
血糖値の急上昇を予防するために、食事のときは「まずは野菜から食べる」ことを習慣にしている人も少なくないと思います。しかし、75歳を超えてからはエネルギー(カロリー)量をできるだけ確保することが先決。最初にカロリーの高いメインの肉や魚などの主菜から食べることを、中村先生はおすすめしています。
さらに、若い頃に「卵は1日1個まで」と教えられてきた人もいるでしょう。コレステロール値を上げるという理由で「卵は1日1個まで」が推奨されていたのは、もう過去の話なのです。卵は栄養価の高い完全栄養食で、タンパク質も1個(約50g)あたり6.2gほど含まれています。調理しやすい貴重なタンパク源として、1日1個までにとらわれず、食べ過ぎない程度に、できるだけ卵を食事に取り入れるようにしましょう。
このように、健康で長生きするためには、年齢に合わせて見直すべき食の生活習慣があります。「人生100年時代」と言われるいま、健康で長生きすることが、自分や家族の幸せにもつながっていきます。生活に取り入れられそうなところから、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
中村先生の著書『75歳からのラクラク1品栄養ごはん』(扶桑社刊)では、今回紹介したポイント以外にも、注意するべき食習慣や、自分の栄養状態のチェック方法、食習慣を改善するための簡単なレシピが多数紹介されています。