ヒメシャラの大木を眺めながら味わう非日常時間
すべての画像を見る(全16枚)玄関を開けると目に飛び込んでくるのは窓の外の自然の森の風景。空間は左右に分けられ上手は洗面浴室と寝室、下手にはキッチン、ダイニング、1階のリビング。階段をスキップした先はテラスにつながるリビングで、さらに上がると図書室のように膨大な本を収納できる書棚のある2階のリビングと、奥に続くゲストルームが。
仕切りがなく、上下階が吹き抜けでつながる壮大な空間はまるでホテルのよう。
庭に向いた大開口は建物の内と外の境界を曖昧にし、どこにいても外の緑に寄り添われているような安らぎと居心地のよさを感じさせます。
「この提案は一発でOKです。口には出さなかったけど、内心ではちょっとねじれた建築物を期待していたんです。想像以上の空間と細部の仕上げへのこだわりがあってとてもうれしかった」(Yさん)。
ひときわ目を引くのは壁の長辺に造作された本棚。「自宅にたまった書籍や好きで集めたガラクタを並べたかった。今は月に1、2度訪れては温泉やゴルフに出かけ、好きな場所で本を読んではごろごろしています。じつは家族には設計中のプランをなにも相談しなかった。長男家族や妻が友人と訪れたりしていますが、案外満足しているようですよ。直接は言われないけどね」(Yさん)。
Yさんの思いが詰まった隠れ家のような別荘。ここには心と体を休められる静謐な時間が流れ、ぜいたくな非日常を満喫する仕掛けにあふれています。
間取り図と配置図、周辺環境について
●間取り図と配置図
隣地との関係性も考慮して配置された建物は、半円状の弧を描くようにスペースを分節。室内の仕切りは最低限にとどめ、1階と2階が自然につながる大きな空間を堪能できるプランです。
●周辺環境
庭側から見た外観。伐採せずに残したヒメシャラと数本の木を囲むように建物が配置されています。
「うっそうとした樹木で覆われた敷地だったので、森の風景を生かすアイデアを考えました。森の木を尊重し、少し遠慮しながら建てるという感じですね。建物のプロポーションは初めから決まっていたわけではなく、アイコンとなるヒメシャラの存在に気づいたところから形が導き出されたんです」(廣部さん)。
木を中心にして弧を描くように、左右に建物が配されているのがわかります。
玄関側から見た外観。敷地は車の行きかう道路沿い。近隣にはレストランや観光施設もあるため小さな窓のみにし、室内からの視界と意識をカットしました。敷地の傾斜を生かし、地面から浮いて見えるように建物を設計しています。