読者から届いた素朴なお悩みや何気ない疑問に、人気作『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社刊)の作者・菊池良さんがショートストーリーでお答えします。今回は一体どんな相談が届いているのでしょうか。
すべての画像を見る(全4枚)ここはふしぎなお悩み相談室。この部屋には世界中から悩みや素朴なギモンを書いた手紙が届きます。この部屋に住む“作者”さんは、毎日せっせと手紙に返事を書いています。彼の仕事は手紙に書かれている悩みや素朴なギモンに答えること。あらゆる場所から手紙が届くので、部屋のなかはぱんぱんです。
「早く返事しないと手紙に押しつぶされちゃう!」それが彼の口ぐせです。
相談に答えてくれるなんて、なんていい人なんだって? いえいえ。彼の書く返事はどれも想像力だけで考えたショートストーリーなのです。
さぁ、今日も手紙がやってきましたよ──。
【今回の相談】人との会話を振り返って、あとから後悔してしまう…
知り合いと話したとき、あとから「あの受け答えでよかったんだろうか」「失礼に思われてないだろうか」と気になってしまいます。いったいどうしたらいいでしょうか?
(PN.アオサギさん)
【作者さんの回答】白い布を被らずに、歌いましょう
その家の「異変」に気づいたのは、家族で引っ越してきてからすぐのことでした。
廊下からとん……とん……と雨漏りのような、いや非常にゆっくりと歩いているような物音がするのです。毎日のようにその音がします。
母にそのことを言うと、「物音なんか気にならない」と意に介しません。「そんなのは歌っていれば耳に入ってこない」と。そう言って、ほんとうに歌いだします。古いジャズのナンバーでした。母がそうなると、父もいっしょになって合唱して、振り付けまでつけて踊りだします。
それはふたりの昔からの遊びで、ミュージカルのように家のなかで歌い出すのです。わたしが生まれる前から、その遊びをやっていたと聞きます。わたしはそんな親が自分よりも子どもっぽく思えて、真似したことはありません。
●怪しい音の正体は…
わたしは音の正体を確かめることにしました。スマホを廊下に設置し、動画撮影モードで充電が切れるまで撮影します。電源を回復させると、早回しで動画を確認しました。
そこに映っていたのは……ゴーストでした。
ゴーストというのは、ほんとうにゴーストなのです。あの白い布をかぶり、目の部分だけ丸くくりぬかれたゴーストです。それがゆっくりと廊下を歩いている姿が映っていました。
わたしは両親にその動画を見せました。ふたりはしばらく絶句したあと、実際にゴーストの正体を確かめようとなりました。
いつ出てくるかわからないので、ずっと廊下に張り込むことになりました。毛布を持ち込み、三人でくるまりながら出てくるのを待ちます。小声でおしゃべりしていると、なんだかキャンプみたいで楽しくもありました。
しかし、いつまであってもゴーストは出てきません。もしかしたら、わたしたちがいると出てこないのかもしれない。あるいは肉眼では見えなくて、レンズ越しにしか現れないのかもしれない。夜は深まり、次第にうとうとしてきます。そのときでした。