秋や冬などは特にうつのリスクが高まりますが、特に気をつけたいのが、環境下によるもの。仕事や妊娠出産などの変化など、あらゆるところにリスクは潜んでいます。そこで、うつメンタルコーチで公認心理師の川本義巳さんに、うつになりやすい人の兆候と、それを免れるコツを伺いました。
すべての画像を見る(全3枚)うつになる兆候と、可能な限り回避するコツ
以前とある企業の課長さんから「うつになる人はどんな特徴がありますか?」と聞かれたことがあります。なぜそういう質問をしたのかというと「事前にわかれば採用しなくてもよいから」ということでした。それを聞いて残念な気持ちになりました。私としては「うつになった社員を助けたい」と言ってもらう方がやっぱり嬉しいものです。
でも、この課長さんの気持ちもわかります。なぜかというとうつの原因って本当にはっきりしていないからです。よく脳の障害とか精神の病気とか言われたりしますが、これも決定的ではないようです。
私自身もうつの人のお話をたくさん聞いてきましたが、本当に一人ひとり違いがあります。たとえば病院で診察をしてもらって、投薬治療を受けている人でも、たくさん薬を飲んでいる人もいればまったく薬を飲んでいない人もいます。
これはすべてお医者さんが診断をした結果なので、基準があって出されているのですが、それでも違ってくるというのは、うつというのがどれほどわかりにくいものなのかが想像できますね。
●自分の成功パターンが通用しなくなると、うつの引き金になる?
ちなみに私は精神科医ではないので、医学的な判断をできる立場ではありませんが、私なりに「こういうことが起こっていそうだな」というポイントは、その人の成功パターンと現在の環境とのギャップでうつが生まれやすいということです。
私たちはそれぞれ、小さいころから身につけた「自分の成功パターン」を持っています。
ガマンすることでうまく行った人はガマンします。
怒りを表出することで、他人をコントロールできた人は、それを続けます。
他人に頼ることでうまく行った人は、他人を頼ります。
自分でやった方がうまく行った人は、なるべく自分でやろうとします。
ほとんどの人が、自分がうまく行った方法にこだわってそれをやり続ける傾向があります。なぜならその方が生きやすいから。
ところが、あるタイミングからそのパターンが通用しなくなることがあります。それは自分の成功パターンが通用しない環境に身を置いたときです。私がこれまでお話を聞いてきた人たちも、ほぼそのパターンでした。
●環境の変化には要注意
自分の意見をあまり主張しないという成功パターンを持っていた人が、職場のリーダーをまかされ、常に意見を求められたりするようになり、適応できなくなったり、時間通りに行動するというパターンを持っていた人が、サービス残業が多く、休憩時間もあいまいな会社に転職した結果、リズムが狂いストレスがたまってしまったり…。
転職や異動、昇進のタイミングでうつ病になる人が出るのは、こういうことが理由だと思っています。また、出産や育児などもこれまでやったことがないパターンになるので、同じようにうつになりやすいと言えるかもしれません。