定年退職や住宅ローンの完済、子どもの独り立ちなどが重なる60歳前後は、住まいを見直すチャンス。残りの人生をより有意義に過ごすために、“理想の住まい”を意識しておきたいもの。買い替え時の注意点、そしていつかひとり暮らしになったときの住まい選びについて、『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)を上梓した、マンショントレンド評論家の日下部理絵さんに聞きました。

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マンションに住む夫婦
子どもが巣立った後など家族構成が変わったタイミングは次の住まいを意識するときです(※画像はイメージです。以下同)
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住み替えはマンション派が急増。買い替え時の注意点

今、60歳前後で所有している家を売り、利便性の良い駅近マンションや管理費等の安いコンパクトマンションに移る人が増えています。もし、将来「買い替え」をする場合は何に注意すればいいのでしょうか。

●売りと買い、同時進行は二重ローンの危険性も

「本来、買い替えは売却と購入をほぼ同じタイミングで行う『売り買い同時進行』が理想ですが、割安で売ることになったり、新居選びに十分な時間が取れなかったりというデメリットも。実際には、無理に同時進行せずにどちらかを優先するほうが賢明です。

新築マンションへの買い替えなど入居が数年先になるからといって、安易に『買い先行』にするのはNG。長期間買い主が見つからず、二重ローン地獄に陥る可能性もあります。とくに、築古や駅から遠い物件は、『売り先行』にして焦らずのんびり売却先を探すほうがいいでしょう」

だれが経験してもおかしくない、買い替え時のトラブルや失敗。幸せになるための買い替えで足元をすくわれることがないよう、新居購入の売買契約書に、「買い替え特約(所有物件を一定の条件で売却できなかった場合に新居購入を白紙にできる)」や、「ローン特約(融資を受けられなかった場合に新居購入を白紙にできる)」などの特約をつける対策が必要です。

●老後にひとりになった場合の住まい選び

一人で食事をする女性

女性の平均寿命が男性より6年以上長いことを考えると、パートナーに先立たれたあとの住まい選びも気になりますよね。「団体信用生命保険(通称:団信)」によって住宅ローンが完済されても、「老後の資金を残しておきたい」「もう少し小さな部屋でいい」などの理由からあえて住み替えを選ぶ人も多いようです。

「なかには、所有マンションを貸し出し、賃貸収入の範囲内で借りられるUR賃貸や都営住宅などに引っ越す人もいます。パートナーが残してくれた“家”に働いてもらう、賢い住まいの選び方ですね。

所有(分譲)マンションは長く住み続けられるメリットがある反面、管理費や修繕積立金など将来かかる費用が不透明です。賃貸マンションであれば賃料や共益費以上の費用が発生しないので、生活資金が限られている高齢女性のひとり暮らしでも安心ですね」