日常生活のパフォーマンスを下げる“コリ”。対策として、日常で「ピップエレキバン」を使っているという方もいらっしゃるのでは? しかし、意外と知られていないのが開発までのエピソード。そこで今回は販売元である、ピップ株式会社 商品開発事業本部 松浦由典さんにお話を伺いました。

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商品を持つ男性
今回話を伺った、ピップ株式会社 松浦さん
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今年で「ピップエレキバン」が誕生してなんと50周年。今でこそこの商品名は有名ですが、発売当初はなかなか売れない時代が続いたそうです…。

●最初は“メーカー”ではなく“卸問屋”だった

1908年の創業当初
1908年の創業当初(写真提供/ピップ)

ピップの歴史は1908年に医療用の卸問屋として創業したことがスタートです。今でこそ医療機器メーカーのイメージが強いですが、当時はガーゼやマスクなど、でき上がったものを仕入れて販売していたのだとか。

「創業して60年くらいは、マスクやガーゼなど、医療衛生用品を仕入れて販売していたのですが、1968年にメーカーとして自社開発を始めました。最初の自社製品は生理用品。その後シャンプーハットなどそれなりのヒットはしていましたが、これぞ自社の“主力商品”というものはなかなか販売できずにいたんです」(松浦さん)

そして自社開発を初めて3年目の1970年。当時、磁気治療器が流行っていたこともあり、4商品目は磁石をつかった製品を開発することになりました。これが、今でも愛される続けているロングセラー商品「ピップエレキバン」です。

「新商品をいろいろと考えていた矢先、ある社員が絆創膏に硬くなった米粒をつけて、肩が凝ったところに貼っていたみたいなんですね。それを偶然見つけたほかの社員が『これだ…!』と目をつけて、絆創膏と流行っている磁石の組み合わせを思いつき、開発にいたりました」

笑う男性

「多分押すと気持ちがいいから貼っていたのだと思うんですけど、そのアイデアと、それを偶然見つけた社員がいたからこそですよね。そういった気づきがなければ、もしかしたら世に出てなかったのかもしれません」

●斬新すぎたアイデア。それゆえに苦労も多々あった…

エレキバン

そんな偶然の連鎖で生まれた「ピップエレキバン」。現在の認知度などを考えると、発売当初から人気が爆発していたのかと思いきや、そうでもないそうで…。

「発想は磁石×絆創膏といたってシンプルですが、体に貼るにあたって刺激や形状など、開発には2年を要しました。そんな年月をかけ、満を持して発売したものの…磁石に絆創膏というスタイルが新しすぎて売れなかったんです…」

自信を持っている商品だから、たくさんの人に届けたい”。そう考え、営業は駆け回って販売促進努力していたものの、なかなか結果に結びつかず…。そんな売れない日々が5年ほど続いたある日のこと。

話す男性

「なんとか商品の価値を伝えようと、CMの出稿料が少し安かった九州エリアにTVCMをうつことに。当時の会長・横矢さんが1人で出演し『ピップエレキバン!』と連呼するという、このシュールなCMが功を奏し、お客さまに商品のよさを伝えることができたんです」

この独特な世界観が話題となり、商品名は全国に広がっていきました。

「正直、今3,4年も売れなかったら、もう諦めて次の商品に向いてもおかしくないですが、当時の社員がピップエレキバンの価値を信じて、粘り強く店頭交渉や宣伝アイデアをしぼって…ようやく5年で花が開きました。先人の努力と粘り強さのおかげで今こうして会社や僕らがいる。だから、これからもその想いを大切にしていきたいですね」