●ごく普通に暮らしている人を描きたい…!

原田ひ香さん2
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原田さんが「節約を小説にしてみたい!」と思った背景には、その当時の主婦像の描かれ方への疑問もあったといいます。

「今から10年以上前だと、小説に出てくる主婦と言えばサスペンスもので犯罪に巻き込まれるか、不倫の被害者だったり(笑)。それを見てもっと普通に暮らしている人はいないの? って思ったんですよね。雑誌に出てくる節約生活は小説よりよほどドラマチックだし、リアルでした。

食費は2万円、貯金は3万円…って結構厳しい予算で運営してるのに、ちっともみじめな感じがしない。むしろ充実していて幸せそう。ああ、こんな“幸せ”な人たちを描きたいなあ。どうしてこんなに幸せでいられるのかを掘り下げたいなあ、と思ったんです」

そんな原田さん自身の暮らしぶりは、どんな感じなんでしょう?

「先ほども言いましたが、冷蔵庫の残り物はなんでもスープにしちゃいます。カレーにアレンジしたり、さいごは全部ミキサーでつぶしてポタージュにしたり。それに、食費は週に4000円、って決めてるんです」と少し意外な答えが!

「もう少し食費にお金をかけてもいいのかもしれませんが、なにかしらの目安がないとな、と思って。それでどのぐらいのものが買えて、どんな料理ができるのか。わが家は夫婦ふたりなので、食べる量もある程度わかってますし」

食をテーマにした作品も多い原田さん。作品に出てくる節約料理もつくってみることが多いといいます。そして、作品に出てくる街にも、実際足を運んでみるのだとか。

「行かなくても、やらなくても、ある程度は書けてしまう。今はネットでなんでも調べられますし。でも、実際に体感することで、なにか感じるものはあるはず。だからそこから話が膨らむと、おもしろくなるんじゃないかなと」

●将来のことは誰だって不安

原田さん

「私が生活情報誌を読むようになって10年と少し。その間にもすごくいろんなことが変わったな、と思います」と語る原田さん。

「節約をテーマに書き始めたのはコロナ前でした。まさかこんなことになるなんて。なので、最新作ではコロナ後のことも多少予測しながら書いています」

その言葉通り、『財布は踊る』では、節約生活の末に手に入れたブランド物の財布がいろんな人の手を転々とし、それぞれの人にドラマがあり、お金の悩みやトラブルが描かれています。

「誰もが将来のこと、お金のこと、不安なんですよね。私だってそうです。でも、不安がってばかりいてもなにも変わらないし不安も消えない。『少しでもお金のことを考えたい、知りたい!』と思うところから始まって、まずは自分の生活を正すところから始めてみる。できることから少しずつでも工夫していけば、お金だけでなくて、生活そのものも整っていく。そんなプロセスを描いてみたかったんです」

コロナがすっかり終わったとき、社会はどうなるのか。それはまだわかりませんが、少なくともこの3年の間に、生活やお金のことを見つめ直した人も多かったのでは?

「生活情報誌には人々の現実が載っています。そんなリアルな感覚を追い続けるためにも、これからもESSEさん、頼りにしてます!(笑)」

 

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