家づくりでは、どちらかというと軽視されがちな玄関回りのプラン。じつは、あえて広くしたり、内と外のつながり方を工夫したりすることで、機能的なうえに、雰囲気のある玄関にできます。一級建築士の新井崇文さんが、そのうちの1つの形として提案するのが、「外とつながる土間スペースのある玄関」。自身が設計した事例をもとに、詳しく解説します。
すべての画像を見る(全18枚)土間スペースが広い玄関のメリット
靴を並べておくための土間スペース。この土間スペースをあえて広めにとると、玄関が広くスッキリと見えるだけでなく、日常生活での動作にもゆとりが生まれます。なぜでしょう?
たとえば、雨の日に家族みんなで出かけるとき。土間スペースが広ければ、何人もが同時に靴を履いたり、土間スペースでコートを着たりと、身支度ができます。先に靴を履いて身支度をすませた人が、雨の中で、待つこともなし。
このお宅では、土間スペースから出入りできるシューズクローゼット(黒い扉の部分)を設けています。靴やコートはこの中にしまう仕組み。おかげで、土間スペースをスッキリと見せることができます。
広い土間スペースがあれば、観葉植物を飾ることもできます。窓越しに外の緑と中の緑がつながり、玄関スペースにうるおいが感じられるように。土間スペースは、床が水濡れしたり汚れたりしても、気にならないのが強み。観葉植物に水やりする際にも、気兼ねしなくてすみます。
また、お気に入りの自転車を安全な室内で保管したい、という際にも玄関の土間スペースはうってつけ。このお宅でも、将来そのような使い方がされるかもしれません。
土間スペースとアプローチの緑をつなげる
このお宅では、道路から玄関までのアプローチをゆったりとつくっています。
アプローチには、高木から下草まで緑が豊か。
アプローチを右に左に折れつつ、ステップを上がっていき玄関ポーチへ。
そして、建物内部に入っても、再びこのアプローチの豊かな緑が楽しめる仕掛け。
ガラス窓は、枠がスッキリとしたFIX窓を基本にしつつ、下部をすべり出し窓に。通風にも配慮しています。
玄関は大部分が土間スペースですが、上がり框(かまち)から先の空間もリビングと一体につながっています。そのため、玄関から家の中を見ると、広々と感じます。
リビングの先には、建物の南東側にある庭が。ゆったりとしたアプローチから、玄関へ、そしてその視線の先も、開放感が楽しめる住まいとなっています。