問われているのはSDGsの「18項目目」

喫茶ランドリーの内部
喫茶ランドリーには、洗濯機・乾燥機やミシン・アイロンを備えた家事室が。ここにはさまざまな人が訪れる。現在は、その理念に共感した店や場所が全国に広がっている(写真/阿部太一)
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たかまつ:建築とか住まいという観点からSDGsを考えるとき、どうしても、エネルギー効率やリサイクルといった話になりがちです。田中さんから見て、日本のSDGsの広がりに欠けている要素はなんだと思いますか?

田中:日本特有かもしれませんが、手法とか方法が好きですよね。人間性よりも仕組みが優先。
でも、人間は理屈で正しいとわかっていることより、自分が心地よいことに流れるものです。だから、暮らしに根付くSDGsって、正しさ以上にワクワクする感覚が必要なんじゃないかと感じています。

たかまつ:こういう暮らし方がいいなというのはありますか。

田中:SDGsというと地方移住や自給自足生活が注目されますが、私はなんだかんだ言って、都市暮らしが大好き。都会生活ってSDGs的にはマイナスに思われがちですが、多様な人間がそこにいて、多様な生き方が許されているという面もある。
自由に生きていいと感じられる。そんな暮らしを目指したいです。

たかまつ:田中さんがおっしゃる多様な人がいて、多様な生き方が許されるって、とてもSDGs的ですが、個人はどう実践したらいいのでしょうか?

 

フリーコーヒー屋台
2013年、趣味で始めたのが「フリーコーヒー屋台」。道端で見知らぬ人同士の会話がはず

田中:大阪のご婦人が配る「アメちゃん」。あれって、ハンドバックに「公共」を忍ばせていると私は思うんです。知らない人に接触する可能性を考えながらの準備。すごく公共的な考え方です。
小さなことでいい。なにからなにまで自己責任・自己完結ではなく、どこかに属し、そこにいる人たちを楽しませて自分も楽しい。そういう経験がいたるところで生まれたらいいと思います。

たかまつ:やらされているのではなく、自分から動くことが大切ですよね。自分から動くことが結果的にSDGsを加速させる。SDGsを自分事化するためのヒントになります。

田中:SDGsの17項目を並べたロゴって、右下にスペースがありますよね。私は、その空欄の18 個目がSDGsの本当のメッセージだと深読みしているんです。「あなたはここになにを入れる?」。そう問われているんじゃないかって。

たかまつ:SDGsは社会を変えるための目標なのに、暗記科目にしてしまっている人もいます。そうではなく、自分で課題設定して、そのために行動を起こすことが大事なわけで。「18個目を考える」って、すごくいいですね。

田中:17項目が自分事になるためには、18個目に「孤独の解消」とか「自己肯定感の向上」が入るといいなと思っています。ひとりぼっちの人に、SDGsを自分事として実践しましょうと言っても難しい。
ボトムアップも同時にしていかないと、手法や仕組みを上辺だけ取り入れて終わってしまう。SDGsが自分事になるためには、自分自身のマインドセットを問う。それがいちばん大事ではないでしょうか。

たかまつ:先日、イギリスで2000人規模の化石燃料の抗議デモを取材して、その敷居の低さに驚いたんです。家族連れも多く、みんなカジュアルに楽しみながら参加していて。

田中:いいですね。

たかまつ:それを見て、少し反省をしました。「若い世代がちゃんと変えていかなきゃ!」と気負っていた部分があったのですが、ゆるさも大事だなって。

田中:以前、ロンドンのオーガニックショップに行ったら、パンクスタイルで耳はピアスだらけ、腕はタトゥーだらけのお姉ちゃんがレジを打っていて。私、それがすごくうれしかったんです。「がんばってエコやってます」という感じが全然ない。自分のハッピーのなかにSDGsが自然と組み込まれている。それが本当の成熟なんだと思います。

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