犬と一緒に柿畑へお出かけ
ケーキを半分残して食べ終えると、犬も一緒に柿畑へ出かけた。5月は摘蕾(てきらい)の作業である。畑で犬は現場監督のようにじっと見守っていたり、かと思えば土を掘り始めたり、気づけば脱力して眠っていたり、風の吹くまま気の向くままにお過ごしだ。
すべての画像を見る(全14枚)母が犬の隣に腰かけて休憩しているときに、名前を呼んで「8歳になったんかぁ」と感慨深そうに呟いた。
そして「もうすっかり家族になった感じがする」と犬の背中を撫でた。私は母の言葉を反芻しながら頷いた。最初から家族だったのではなく流れる時間のなかで家族になっていく。
夕方になって妹がお祝いに駆けつけた。なんだかGW明けでやつれていて「犬に癒されたい」と覇気なく言った。犬は妹を見ると柴ドリルで活気よく迎えた! これは遊ぶための準備運動である。たった今もう癒されたのでは?
犬の誕生日やし母の日前祝いやし妹帰ってきたし晩ごはんは手巻き寿司。そぼろとアボカドの組み合わせがうまかった。もちろん食事の前には、妹も加えてあらためて誕生日のお祝いをした。お祝いなんてなんぼしてもええのが家訓。
朝半分残しておいたケーキにろうそくを立て、母と妹とハッピーバースデーを合唱した。音程の外れたハッピーバースデー。この瞬間、うちが西日本でもっとも平和な光景だったかもしれへん。
犬の名前を呼んで歌い終えれば、妹がろうそくの火を消して、みんなで「おめでと~!」と言い合って拍手を贈った。犬はもう食べてええんか? といった感じで、ふたたびケーキに夢中になった。
「やっぱり妹がいたら犬もさらに嬉しそうやなぁ」と母が笑った。犬がみんなに祝福されてよかったし、祝福できるみんなもおめでとうだ。
8歳も走って遊んで食べて眠っていい感じの棒見っけてよ、心身ともに健康でいてください。
この連載が本『inubot回覧板』(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。