念願の家づくり。眺望のいい場所に家を建てたいという人は、擁壁のあるひな壇状の敷地を選ぶケースが多くなります。しかし、古い擁壁を目にすると、この土地を購入していいものか、不安を覚えることも。そこで今回は、その注意点を一級建築士の守谷昌紀さんが解説してくれました。
すべての画像を見る(全11枚)法律では建物だけでなく「敷地の安全」も求められる
建築をする際には建築基準法を守る必要があります。この法律では、「建物の安全」だけでなく、「敷地の安全」も求めているのです。
擁壁があったり、傾斜がきつかったりする場合には、土地の安全を担保しなければいけません。
擁壁の安全性は、地元自治体の検査で、公的な証明がなされているケースもあります。しかし、それがない擁壁の場合、購入したあと、補修作業が必要になったり、擁壁に負担をかけない建て方を検討したりしないとけないケースも出てきます。
「敷地の安全」は、最終的には土地の所有者が守らなければならないからです。
公的な証明書のないプライベートな擁壁には要注意!
以前、事務所に30代前半の若い夫妻は、小さな子どもをバギーに乗せ、3人で相談に見えました。
閑静な住宅街にある、比較的傾斜のきついエリアの土地を、すでに購入しているとのこと。この土地の魅力を生かした、住みやすい家を建てたいという相談です。
さっそく土地を見に行くと、擁壁の上にあり、大変眺めのよい敷地。夫婦は、不動産会社の担当者から「このくらいの大きさの家が建ちますよ」と、簡単な図面をもらっていました。
「擁壁の安全性について、説明はありましたか?」と聞くと、「ありませんでした」と。プランを提案して欲しいという相談だったのですが、まずは敷地の調査から始めましょうと答えました。
現地を見に行くと、擁壁の高さは5m以上あり、工事の精度もいまひとつ。どうやらプライベートな擁壁のようです。
プライベートな擁壁とは、安全であるという公的な証明書がないものです。これがなければ、擁壁に、まったく圧力をかけないよう離して建てるか、荷重をかけないような対策を施さなければなりません。