作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。今回は、すっきりさせたくても捨てられずにいるものについて、つづってもらいました。
第71回「見せられない部屋 その2」
すべての画像を見る(全3枚)●気がつけば増えてしまう「紙」
前回書いた見せられない部屋で、本やCDに次いで占拠しているものが紙である。友人や家族から届いた手紙、年賀状、素敵な包装紙、民芸品店で買ったロール和紙、お店の紙袋、契約書に原稿、手書きメモ、ノートも膨大にある。
一枚だと薄いのに、積み重なるととんでもない重量になって部屋を圧迫する紙たちよ。旅先や美術館で買ったレターセットやポストカードは、ここぞというときを待っているがなかなか出番がこない。小学生の頃に集めていたかわいい紙とか、「りぼん」の付録の便箋は、もはやもったいなくて使えないでいる。使うタイミングがないというより、レアすぎて使えないのだ。
私同様に紙が好きな人は多いんじゃないだろうか。さわり心地やつや感、なんとも言えない香ばしい匂いも、綺麗に保管して活用できれば暮らしを彩る。例えばプレゼントでいただいたお菓子の素敵な包み紙は、袋にして友達に何かをあげるときに使ったり、作詞のワークショップで手作り詩集を作るときの背表紙として活用することもある。出版社から本が届くときに本が包まれているベージュ色の厚めの紙は綺麗に伸ばして、庭の花で花束を作るときに使う。
素敵な箱をとっておいてしまう癖もあり、押入れにストックして贈り物をするときに再利用する。本や手作りのジャムを送ったりするのにもいい大きさだから、我が家では箱やダンボールが一番よく再利用されている。
●捨てられずにかさばっているのが「書類」関係
手強いのが、仕事関係の支払い明細書とか契約書のような、捨てていいのか駄目なのかわからない紙類だ。お仕事関係の出版社や音楽レーベルから届く明細書が容赦なく溜まっていく。最低3年は取っておいた方がいいと聞いたのでダンボールに入れているんだけれど、想像以上にかさばり、それが積み上がれば岩のごとく重くなり、紙の恐ろしさを知る。
3年後、それらをシュレッダーにかけて捨てることの面倒臭さ。しかも、数年前にシュレッダーが壊れてしまった。