●解決方法を増やすための「問題解決トレーニング」

悩む子ども
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続いて、宮口先生がおすすめするのが、「問題解決トレーニング」です。

「『問題解決トレーニング』は、社会で困った場面に遭遇した時に思考を柔軟にして、自分の力で解決していくための訓練です。問題行動を起こす子どもたちの中には、思考の柔軟性が乏しく、問題を起こしやすい子もいます。

たとえば、『お金がない』という問題があるときに、『人から取る』という解決方法しか浮かばないと、仮にそれが間違った行動であっても、その選択を繰り返してしまいます。そこで、『取る』以外に、『節約してお金を貯める』『だれかからお小遣いをもらう』などの選択肢が浮かべることができれば、問題行動はぐっと減っていきます」

 

●解決方法を教えるのではなく、自分の頭で考えさせる

頭に浮かぶ解決方法を増やすため、効果的なトレーニングが、「自分が困っているシチュエーション」をいくつか想定し、それをどうやって解決するかを考えていくというもの。

「たとえば、『ケンカをしてお互いに会いたくないと言っているAさんとBさん両方に、自分の誕生日会に来てもらうには、どうしたらいいのか』などというシチュエーションで、自分ができる解決策を考えてもらいましょう。実際にこのトレーニングを行ってみると、子ども側からは『お菓子をあげて二人が来てもらう』『AさんとBさんの両方に、嘘を伝えて来てもらう』など、現実社会では通用しなさそうな回答が出ることも多いです」

ただ、ここで重要なのが、簡単には正しい解決方法を教えないことなのだと、宮口先生は続けます。

「正しい解決方法を教えることは簡単ですが、それはしません。なぜなら、いくらいい方法であっても、彼らが実生活で使えなければ意味がないからです。自分たちの頭で考えるからこそ、意味がある。彼らが等身大で出した解決方法を選ばせ、結果を予測させる。その予測した方法でその方法がうまくいくかを判断し、ダメだったらまたほかの方法を考えてもらう。一番大切なのは、いかに柔軟に、いろんな案を出すことができるかです。柔軟な案を自力で出せないと、いくら失敗しても同じ手法しか選べませんから」

 

●学習の土台をつくる「認知機能強化トレーニング」

学習する子ども

そして、最後に実践してほしいのが、学習の土台をつくる「認知機能強化のトレーニング」です。認知機能とは、記憶や言語理解、注意力、知覚、推論や判断などのこと。これら認知機能を高めることが、問題行動を減らすことにつながるのだとか。

「運動でたとえると、鉄棒や跳び箱を飛ぶためには、テクニックだけでは困難です。筋力や持久力、集中力などの基礎体力が必要です。認知機能は、まさに学校での各教科を理解する上での基礎体力のようなもの。認知機能が弱いのは、筋力や持久力がほとんどないのに野球でピッチャーをやれというのと同じです」

基礎体力となる認知機能が弱いと、勉強についていくのが難しくなり、結果、挫折経験が増えて、問題行動にもつながり、非行などに走ってしまう子も決して少なくないのだとか。では、認知機能を強化するにはどんなトレーニングが有効なのでしょうか?

「認知機能を強化する前に、その子の認知能力の特性を知っておく必要があります。そこでアセスメントとして活用できるのが、例えば立体図の模写や『ケーキを3等分するにはどうしたらいいか』、特定の記号をできるだけ早く数えるなどといった問題です。実際にやらせてみてその子の弱いところが分かれば、そこに特化したトレーニング(例えばコグトレなど)を通じて、周囲の大人たちは、その子に合った適切なケアを行うことができます」

 

「原因はよくわからないけれども、最近、うちの子がキレやすい」と感じる人は、ぜひ上記トレーニングなどを実践してみてはいかがでしょうか。