否応なしに「老い」を自覚することも多い、50代以降。ふとした瞬間に「老けたなあ」と落ち込むことはありませんか? ここでは、シリーズ累計30万部を突破した、精神科医の中村恒子さんと奥田弘美さんの共著書『不安と折り合いをつけてうまいこと老いる生き方』(すばる舎)から、上手に老いを受け入れて生きるためのヒントをご紹介します。

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50代以降、上手に老いを受け入れる方法とは

「精神科医として診察をしていると、『老い』にネガティブなイメージを持ち、老いることに不安やストレスを必要以上に持つ人が非常に多いと感じています」と、中村さんと奥田さんの2人は話します。

●今は「自然に老いる」ことが難しい時代

悩む女性
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「現代では、“いつまでも美しく、若くあること”という、メディアや広告からのメッセージが浸透し、『アンチエイジング』が大流行しています。“若くいなければ”という強迫観念に駆られてしまうのも無理はない世の中なのです」(奥田さん)

92歳の精神科医・中村さんも、こう話します。

「昔は、結婚して子どもを持ったあたりから、女性は「おばさん」、男性は「おじさん」とひとくくりで気楽なものでした(笑)。50代だと、もうおばさんどころか、おばあさん扱い。老いに抵抗するという感覚がそもそもなく、すごく自然に老いていけましたが、今はそれが難しい時代ですね」(中村さん)

実際、シワ一つ、シミ一つ増えるのも怖いと、美容皮膚科に通ったり、高額な化粧品を買い揃えたりする人も少なくありません。でも、それは現代特有の事象だと、奥田さんは言います。

「私個人のイメージですが、今の時代では『おばさん』『おじさん』は40代からなんです。30代などは、まだまだ若さにあふれた世代。お金や手間暇をかければ、容姿を若く見せることはできますし、体力もあるからアクティブに仕事や趣味も楽しむことができます。だから、40代でも『老い』の気配をまったく感じず、若さを手放していない人が多い。

50代になってからようやく、体力の低下や容姿の変化から、否が応でも『老い』を自覚させられる人が増えているのではないでしょうか」(奥田さん)

 

●衰えるのは、人間として自然なこと

鏡を見る女性
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若くあり続けるために美容にお金や時間を使う。そうすることで、自分自身が“ご機嫌”でいられるならいいのですが、いつも見た目を気にしてアンチエイジングに振り回されているのは、考え物。その場合は、「老い」への意識を改めてもいいかもしれない。そう、奥田さんは諭します。

「老化に抗おうとしすぎることは、ときとして、自ら苦しみを生み出すことがあります。仏教でいうところの『執着』を増やしているからです。『こうあらねばならない』という過剰なこだわりや、『いくつになっても若く美しくありたい』といった強い執着が増えれば増えるほど、現実が思うようにならなくなり、苦しくなってしまいがち」(奥田さん)

中村さんも、若さでも能力でも、いつまでも若い人と張り合おうとしないことが大切と話します。

「そもそも、人間は50歳をすぎたあたりから、見た目だけでなく体力も知力も人生の盛りからゆるゆると下がり、老人の域に入っていきます。にもかかわらず、いつまでも若い人と張り合おうとすると、ストレスを感じるのも無理はないのです」(中村さん)

まず、老いへの対抗心が自分を苦しめていることがあると、認識をする。その上で、老化は自然なことだと受け入れることが大事だと言います。

「『老いて当然』だと開き直る潔さを持つと、心が余計なことに振り回されなくなり、視野も広がっていきます。老いへの不安や恐れがなくなれば、心もだんだん平穏になっていきます」(奥田さん)