お盆には、いつもお世話になっているお坊さんに法要をお願いする人も多いのではないでしょうか。

「一方で、実家を出てお寺と疎遠になっていたり、もともとお寺とおつき合いのない場合、お盆を前に“法要をどこにお願いすればよいかわからない”と困るケースも」と語るのは、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さん。

今回は、実際あった例をもとに、満足できないお坊さんに30万円のお布施を包むことになってしまったケースをご紹介します。

法事
別のお坊さんに30万円お包みしたかった…と思ってもあとの祭り(写真はイメージです)
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急な不幸にあたふた。戒名やお布施に納得できず、申し訳ない気持ちに

佳代さんは都内に住む40代の専業主婦。故郷には、離婚後に男手ひとつで佳代さんを育ててくれた父がいましたが、急な病気で亡くなってしまいました。

関係の深い親戚は全員この世を去っており、葬儀に参列する間柄の人は佳代さん夫妻と、佳代さんの弟だけ。お葬式は家族のみ、葬儀社に手配してもらったお坊さんに送り出してもらうことにしました。

通夜式

ところが、そのお坊さんは通夜式に遅刻をしてきて開始を1時間近く遅らせたり、慌てていたのか故人の名前を間違えたり…。授かった戒名も父らしさを感じるものではなく、ろくな説明すらありません。要は、お世辞にも「いいお坊さん」とは言えない人だったのです。

「なんとも失礼なお坊さんだ」と夫や弟はお怒り気味。佳代さん自身も、亡くなった父を軽んじられている気がして悲しい気分になりました。しかしお葬式の最中ですから、そんな気持ちを伝える間はありません。

あっという間にお葬式は終わり、お坊さんへのお布施として合計30万円を包むように葬儀社から伝えられた佳代さん。なんだか釈然としませんが、これはそこまで高くない常識的な額とのこと。「考えてもしょうがないこと」とそれ以上深く考えないようにして、お金を包みました。

その後、父に対してなんとも申し訳ない気持ちをぬぐえないまま過ごしていた佳代さんは、ある人のことを思い出しました。それは、「いつも法要でお世話になっていたお坊さん」。お盆の時期になるといつも自宅にやってきてお経をあげ、少し父と世間話をしてからすぐ去っていくお坊さんがいたのです。

「もしかして、あの人を父の葬儀に呼べばよかったのかしら」と考えがよぎりましたが、時すでに遅し。そもそも、佳代さんは高校卒業からずっと東京で過ごしており、帰省は年末年始の一度だけ。そのためお坊さんの連絡先や名前すらまったくわかりません。

●葬儀の後、いつもお世話になっていたお坊さんが訪ねてきた!

その後、弟と話し合って実家を処分することにした佳代さんは、故郷の役所や税理士事務所をクルマで行き来する日々を過ごしていました。

夏休みを利用して家族総出で家の片づけを行っていたある日、来客の予定がないのに自宅のチャイムが鳴りました。ドアをあけると、あの「いつも法要でお世話になっていたお坊さん」がいたのです!

聞けば、父と長いこと連絡が取れないため心配になって訪ねてきたとのこと。なんでも、父は数か月に一度はそのお坊さんを訪ねていたのだそうです。
そんなことを父からまったく聞かされていなかった佳代さんはびっくりしましたが、お坊さんは「お嬢さん、こんなにご立派になられて。お父様もご安心でしょう」と、18歳から会っていない佳代さんのことも覚えている様子。

父は先日亡くなったこと、葬儀を家族だけであげたこと、連絡先がわからず葬儀社の手配したお坊さんに読経と戒名授与をお願いしたことなどを伝えると、お坊さんは父の遺骨に向かって読経したあと、法話を始めました。

「父は仏の教えをとても忠実に守る人だった」「お坊さんのもとをたびたび訪れてはさまざまなお話を重ね、豊かに過ごしていた」など、佳代さんの知らない父の姿が次々と語られます。
そして、お坊さんは「次のお宅に回るので…」と自身の連絡先を置いて帰っていきました。

お坊さん

いいお話を聞けてホッとした佳代さんは、葬儀の際に包んだ30万円のことを思い出しました。

父のことをよく知るあのお坊さんであれば、もちろん遅刻はしないでしょうし、きっと父に相応しい戒名を授けてくれたはず。あの方にこそ30万円をお包みしたかった…。

その後もふとした瞬間に思い出しては、複雑な気持ちになる佳代さんです。

葬儀や法事のときにしか会う機会がないお坊さん。でも、必要なときは急に来ます

佳代さんのお話、いかがだったでしょうか。
家族の不幸は突然訪れるもの。また、実家での仏事から長く離れたことで、実際に法事を執り行う必要が発生したときに、手続きや作法がわからなくなるケースはだれにでも起こり得ます。

法要をお坊さんにお願いしたい場合、だれに、どのように頼めばよいのでしょうか。

1.普段から家族と仏事に関する相談をしておこう

地方在住の年配の方を中心に、お寺との縁を深く保っている方はまだまだ多くいます。
「お葬式はこの方に」と決めている場合もありますので、ご両親やご自身の関係を確認し、共有することを心がけてみましょう。

2.宗教者の方と普段から仲よく

もしお坊さんや牧師さんなど宗教者の方と接する機会がある場合、連絡先を交換しておくことで、いざというときに相談させてもらえるかもしれません。

3.僧侶を手配してくれるサービスも

「法要をお願いしたいが、お坊さんにツテがない…」という人には、僧侶手配サービスも。

家族で集まる機会の多いお盆の時期は、ぜひ思い出話などをしながら故人を偲びたいもの。お坊さんは、家族と故人をつないでくれる大事な役割を担っています。
お坊さんの法話を聞きながら故人との距離を見つめ、家族と思いを共有してみませんか?