環境性能はもちろん「住みやすさ」に注目を

デッキテラス
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たかまつ:ゼロエネルギーハウスに対する世の中の関心は、どのくらい高まっているのでしょうか?

三浦:SDGsも含めて、環境のことが気になっている人が増えるなかで、注目度は高まっていると感じます。ただ、「どんな建材を使えばエコなんですか?」といったことを気にする方が多く、そこは少し誤解があるのかなと思いますね。省エネを実現するには、シンプルに断熱材の厚みを増せばいいので、建材にこだわる必要はありません。また、「古民家に住むような、昔ながらの暮らしに戻るのがエコですよね」という話になることも多いですが、「環境にいい=不便さに耐える」というイメージが根強く、ゼロエネルギーハウスの「快適さ」が、あまり理解されていないように思います。

たかまつ:たしかに、暖かくて快適だということと、環境にやさしいということを結びつける発想は、あまりないかもしれません。

三浦:こういう感覚は、なかなか言葉では伝わらないんです。なので、ゼロエネルギーハウスが浸透するには、実際にそのよさを体験することはもちろん、国のあと押しも必要になってきます。従来、日本の住宅政策は地震対策が中心で、それ以外の領域にはあまり力を入れてきませんでした。とはいえ、人は地震だけで亡くなるわけではなく、ヒートショックといって家の中の温度差で亡くなる方もたくさんいます。こうした問題がクローズアップされるようになって、ようやく断熱性や省エネの分野でも、法整備の議論が進むようになりました。

たかまつ:まさにこれから、といったところなんですね。

三浦:普及という意味では、新築だけだと一部の人にしか行き渡らないので、リフォームがカギになってくるでしょう。耐震リフォームですら実施率はまだまだ低いのが現状ですが、それなら耐震リフォームと断熱リフォームを一気にやってしまえば、費用的にも効率がいい。壁の中の構造を強化するときに、断熱材も一緒に入れればすむ話ですから。今後はそうした工事を国が積極的にサポートしていくべきだと考えています。

 

太陽光パネルは、10年でもとが取れる

たかまつ :コスト面はどのように考えればいいでしょう? これまでになかったオプションをつけるという意味では、どうしても「ぜいたく」というイメージはついて回りますよね。

三浦:ゼロエネルギーハウスを「断熱性能を高める」「太陽光発電パネルをつける」というシンプルな形に分けると、太陽光発電のコストについては10年ほどでもとが取れる(設備代を電気代で相殺できる)計算です。「10年は長い」と感じるかもしれませんが、「利回り10%」と考えると、今どきそんな高利回りの商品はなかなかないですよね。それでも高いと感じるのであれば、リースで設置するという手もあります。断熱材については、どこまで手厚く施すかは人それぞれですが、プラス100万〜200万円くらいで考えるといいでしょう。さすがに10年でもとが取れるとはいいにくいですが、今後数十年にわたって快適で健康的な環境が約束されるのであれば、光熱費だけでは換算できないメリットがあるといえるのではないでしょうか。