●体育会系ほどうつのリスクが高い理由

では、先ほどのべた「体育会系のリスク」というのはどういうことでしょうか?

これは一言でいうと「逃げるという選択肢が優先されない」ところにあります。体育会系の人は「自分の努力が結果につながる」という経験をたくさんしてきています。それゆえ、自分に起こっている問題は自分の努力で解決しようと試みます。もちろん、自己解決できる課題であれば、それを乗り越えることで自己成長につながりますからむしろ大歓迎なのですが、うつに関してはかなり勝手が違います。

 

まずスポーツのように明確な採点基準やルールなどがありません。言ってしまえば無限大にいろいろな事象が起こる可能性もあるわけです。そのため、努力しても必ず報われるということはありません。もちろん「逃げる」という選択も有効なのですが、体育会系の人はときに「逃げずに努力する」というモードに入りがちなので、逃げることができる人よりも数段うつになるリスクは高くなります。

 

これはアスリートだけでなく、「がんばらなければならない」という信念を持つ人はすべて当てはまります。私がサポートした例でいうと、看護師さんや学校の先生などがそうでした。

「自分ががんばらないと迷惑をかけてしまう」そう思い込んでしまっていて、それが原因で追い込んでいるようなところがありました。

道を決める女性
じつはがんばる以外にも道筋はたくさんあるということを知ることが大事です
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こういったパターンの人をサポートするときに、私は「がんばらなかったらどうなるか?」ということを想像してもらうようにします。そしてその結果に対して「それは自分の健康よりも大切なことですか?」という質問をします。

私は世の中には自分の命や健康を犠牲にしてまでがんばらなければならないことは存在しないと思っています。何よりも優先されるのは、その人の命であり健康です。

 

うつの問題は心を鍛えれば大丈夫というものではありません。ときには逃げることが最も効果的な場合もあります。「逃げる」という言葉に抵抗があるのなら「道順を変える」と考えてもらってもいいと思います。強いメンタルよりも、臨機応変なメンタルがじつは最強だったりします。