52歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した7歳の長男・うーちゃん、里子の3歳の長女・ぽん子ちゃんという家族5人で暮らしています。 今回は、うーちゃんと少年野球についてのお話です。
子どもとキャッチボールという古泉さんの夢はかなったけれど、肝心の少年野球は…
バッティングセンターに連れて行ったらポコンポコンと上手に球にバットを当てた小1の養子のうーちゃんですが、地域でやっている少年野球の体験入会にママが連れて行きました。
小学校1年から6年生までのチームで、日曜日に朝から夕方までグラウンドで練習しています。最初だったので、指定された時間に行って、ほんの30分くらいコーチと軽くキャッチボールをしたり、転がした球を捕球したりしたそうです。
●初めての少年野球。ふわっとした球で練習します
そして次の日曜日、僕が朝の9時からお昼まで連れていくことになりました。うーちゃんは朝から気合が入って、8時半に行こうと言います。先に行っていつもの野球遊びをしていてもいいかなと、指定の30分前に到着すると、すでに多くの子どもとコーチが集ってそれぞれキャッチボールをしたりしていました。すごい活気です。
僕もうーちゃんに、「あそこのすみっこでキャッチボールしようよ」と誘いました。
「やってもいいの?」
「いいに決まってるよ、ダメって言われたらやめればいいだけでしょ」
うーちゃんは球を捕るのが苦手です。なので、下手投げでふわっとした山なりのボールを投げると、グローブをつけた手を出すもののうまく捕球できず、グローブからはじいて落とします。
うちでの野球遊びでも、投げ返された球をほとんど捕ることがなく、体の横を通り過ぎるのを突っ立ったまま見送り、転がっていくのを追いかけて拾います。体に向かってくる球から逃げようともします。
とにかくキャッチボールは全然楽しくなさそうです。
●なぜか丁重に扱われる古泉さん。白髪のせい?
9時になりました。チームのメンバーが全員集まって輪になり、柔軟体操をします。かなりの人数です。30人くらいは軽くいました。女の子も一人いて、1年生と2年生は合わせて5人くらいでした。
柔軟体操の後は、ランニングやダッシュなど何本もします。基礎体力で、1年生のうーちゃんは音を上げるのではないかと心配でしたが、なんとか追いついています。毎週このような基礎体力の練習に参加するだけでも、相当体力がつくはずです。
僕はグラウンドの脇にジャージ姿で立って、来る人来る人に積極的に「おはようございます」と挨拶していて、なにしろ新参者なので、「なんだこいつ」と思われないか心配していましたが、野球チームは体育会系で年長者に敬意を払う習慣があるのか、すごく丁寧に接していただきました。
それというのも僕の頭髪のかなりの面積が白髪で、おじいさんぽい見た目だったせいだと思われます。立って見ていたらどうぞと、椅子を出していただきました。変に若づくりしなくてよかった。
●充実した野球の練習。グローブが硬いのが気になります
その後は、キャッチボール、ゴロを拾ってネットに投げて走る練習、トスバッティングなどでもうお昼になりました。初めての練習なので上手にはできなくて当たり前で、すばらしい練習でした。
うーちゃんのキャッチボールの相手はコーチがしてくれたのですが、やっぱり上手に捕球できませんでした。それでも何球かは捕球できて、そういった一つ一つの積み重ねで上手になって行くのです。
ただ、うーちゃんが使っているグローブは去年のクリスマスにオモチャ屋さんで僕が買って来たもので、革が硬くてうーちゃんの握力ではうまく閉じれないようでした。ほかの子のグローブを見せてもらうとずっと柔らかい革でした。
僕も子どもの頃の経験では、兄がいる子はお下がりで柔らかいグローブを使っていました。僕は一人っ子なので、新しいきれいなグローブはずっと硬いままでした。もうボロボロで土みたいになっているグローブはフニャフニャでとても使いやすくてうらやましかった記憶があります。
●うーちゃんのために、やわらかいグローブを探し当てた古泉さん。反応は?
そこで、うーちゃんにちゃんとしたグローブを買ってあげることにしました。スポーツ用品店でじっくり調べました。小学校低学年から高学年まで使えるグローブにしようかと思いましたが、今現在上手に捕れなくて挫折してしまっては意味がありません。
幼稚園から小学校低学年までのものが、現在のうーちゃんにはベストチョイスです。その中で一番皮が柔らかいものを選びました。
次の日曜日に、うーちゃんにグローブを渡しました。
「パパと野球がしたい」
「でも、今日これから少年野球だよ」
「パパとしたい」
そう言われると悪い気がしません。まだ7時半で時間はあります。うちの裏のあき地で新しいグローブでキャッチボールをしました。新しいグローブでも捕球はまだ上手にできないけど、投球はずいぶんとしっかりしたボールを投げます。ちょうどそこに、僕の同級生の小池くんがランニングをして通りかかりました。
「お、キャッチボールいいな」
と言いました。幼い子どもとキャッチボールをするなど、多くの男親の夢ではないですか。小池くんの家は娘さんだけなのです。