●私たちが子どもをもたないと決めている理由

――現在、光さんは愛知県、弥加さんは東京と別居生活が長く続いているのと、夫婦生活がないとのことですが、たとえば、子どもに関して2人で考えていることはありますか?

弥加

:私たち夫婦は子どもをつくらないと思います。私たちの関係はファミリーというよりパートナーとして役割を全うする方が心地よく生きていけると思うので。

:僕自身もそうです。僕は弥加さんが一番大切なので、妊娠している間、弥加さんが思いきり仕事をできなくなったり、育児でも多少なりとも仕事に支障をきたすんじゃないかって考えると、積極的になれません。妊娠は女性がするものだから、男の僕に痛みがないというのもつらいです。だから妊娠させてしまうと、僕が弥加さんを傷つけているような気がして…。そういう考えから、僕はそもそも男性が「子どもがほしい」という資格はないと思っています。

短冊
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――お二人ともお互いを大切に思っているからこその考えですね。

弥加

:光くんはとてもやさしい考えの持ち主だと思います。ただ私は肉体的には女なので、子どもを産んでも自分が傷つくとは思ってないし、子どもがいたらうれしいので、仕事はセーブすると思います。ただ、光くんが嫌なことはしたくないので、私たちの間に子どもはできないですね。

:僕も子どもがいたら困る、ということは決してないです。もし子どもがいたとしたら、弥加さんになるべく負担をかけないように、愛知で僕が育てるかも。というか、育児うんぬんの前に、出産する弥加さんのことだけ考えて心配しすぎるのはあると思う(笑)。僕の中では、奥さんがなにより一番だから。

弥加

:本当に優しい考えだと思う。

抱きあう男女

――弥加さんご自身は女性としてどう向き合っていますか?

弥加

:子どもはいたらうれしいし、いなくても充実した人生だし、どちらでもいいと思っています。ただ、もしかすると幼少期から不幸を感じづらい生活を送っていたとしたら、なにかを疑いもせず、考えず、自然に子どもを欲していたかもしれない…。

:僕も幼少期から辛い環境でなかったら、そして男性性を否定しないといけない家庭環境ではなく、子どもを幸せにできる自信があるなら、考えは違ったかもしれない。

弥加

:でも私は、光くんのように自信がない人ほど、子どもや他者の気持ちを考えてくれるものだと思っています。自信がないというのは客観視できるからこそ出てくる言葉だと思います。
そして、「結婚したら子どもをつくるべき」とか「離婚しない方が子どもが幸せ」とか、そういう固定概念のようなものが、身近にいる人を苦しめてないか、不安になります。子どもがいなくても幸せな夫婦はたくさんいるし、逆に子どもがいても毎日夫婦ゲンカをしていて家が壊れそうな場合もある。なにより親のケンカを見ている子どもの心はボロボロで、大人になってから後遺症になる可能性があるのでかわいそうです。男女はこうあるべきとか、夫婦はこうあるべきなんて、どこにもないです。

:自分たちがどうあるべきか、自分の幸せは自分で決めたらいいです。世間がなんと言おうと、目の前にいる相手が、幸せかどうかが大切なことだと思います。世間の常識から外れてなくても、家族が悲しんでいたら意味がないし、たとえ世間から見て変わった形の家族でも、本人たちが幸せならそれでいいと思います。

弥加

:私は、自分たちでつくった子どもは可能性としてなくても、たとえば親が育てられなくなって身寄りがなくなってしまった子どもが身近にいたとしたら、家族として迎えて支えたいと思っています。そして、生きづらさを抱える私たちは、支え合いを基本にしているので、夫婦だけで親にならなくてもいいと思っています。私自身が、一人きりで子育てできるような人間でないことも、充分分かっていますので、色々と工夫をして、今あるネットワークの中で、全員ができるだけ穏やかに暮らせるように生活します。血のつながりがなくても、これからもいろんな人と家族のように支え合って生きていけたらいいなと考えています。

【西出弥加さん】

絵本作家、グラフィックデザイナー。1歳のときから色鉛筆で絵を描き始める。20歳のとき、mixiに投稿したイラストがきっかけで絵本やイラストの仕事を始める。Twitterは

@frenchbeansaya