「気象病」「天気痛」という言葉を聞いたことはありますか? これは季節の変わり目や雨がふる前になると頭痛やめまいを起こすといった症状につけられた名前です。

「うつ傾向の人にも同じことが起こるようで、ここ数年台風が多く発生しましたが、やはり不調を訴える人が増えています」と話すのは、うつ専門メンタルコーチの川本義巳さんです。
こんなときどう過ごせばいいのか、知っておきたい心構えを伺いました。

窓際に女性
悪天候で体調不良になる方が増えていると言われます
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天気の悪さで憂鬱に。体調が悪くて不安な時期の過ごし方

「気象病」「天気痛」はおもに春先や雨の多い梅雨、秋から冬にかけてあたりに起こりやすい症状で、台風のときにも同じようなことが起こります。

自律神経の働きが影響しているようで、寒暖差や気圧差で交感神経と副交感神経のバランスが乱れやすくなることで起こります。もともと乗り物酔いをしやすい人や、筋緊張を感じやすい人、冷えやのぼせを感じやすい人には起こりやすいとされています。

うつ傾向の人にも同じことが起こります。季節の変わり目や梅雨の時期になると「最近調子が悪いんです」という人が増えます。

●一度うつ病と診断された方は、体調の変化に敏感

うつの怖さというのは、気持ちの落ち込みや無気力だけでなく、「体調が悪くなる」という点にもあります。頭痛、不眠、肩こり、のぼせ、冷え、めまい、こういった心のこととは一見関係のないような症状も引き起こします。

とくに一度うつ病と診断された方は、こういった体調の変化に敏感です。少しでも体の変化を感じると「またうつが始まった」そう思ってしまう人もいらっしゃいます。実際にはうつの再発ではなく、天候や気圧の変化による一時的な症状であっても、体に刻まれた記憶はそれを「うつ」だと思いこませてしまいます。

そしてこの「うつかも?」と思ってしまう思考パターンが、さらに不調を生みやすい状況をつくります。結果、抑うつ状態が続き、うつ病を再発されてしまうケースもありました。

田中圭一さんの著書『

うつヌケ

』(KADOKAWA刊)にも、気温の変動とうつ症状についてのくだりが出てきますが、実際にうつ傾向の人たちの話を聞いていると、やはり天気による影響はあると感じます。
私自身も、気温や気圧変動にはめっぽう弱いタイプで、頭痛や軽いめまい、肩こりやのぼせを感じることがあります。そしてこれらの症状は自分がうつ病だったときとほぼ同じです。

●あくまで気象の変動で起きていること、と考える

ただこれらは本人の感覚によるものなので、検査等では判明しないため、判断が難しいところでもあります。原因やうつとの因果関係がはっきりしないのが気持ちが悪いところでもありますが、現実に起こっていることなので、それに対処する術を持ちたいという気分になりますよね。

このやっかいな「気象病」と「うつ」なんですが、実際に私がクライアントさんたちにお伝えしていることがあります。それは次のようなことになります。

(1) これは気象の変動で起こることであって、うつ病とは限らない (2) 同じようにしんどいと感じている人は多い(または増えている)

まず、気象病とうつ病の因果関係が明確ではないので、「気象病の症状が出た=うつ病になった」という考えにストップをかけてもらいます。そして「同じ症状の人が普通に存在している」という情報提供をすることで、安心感をもってもらいます。

じつはこれだけでもずいぶんと違ってきます。気象病だと天気が回復すれば、不調もなくなりますから「今は仕方がない」と思えるようになりますし、無理をしないように気をつけてももらえます。これがうつ病だとこうはいかないので、本人の不安は増える一方でなかなか消すことはできません。

これで実際に天気が回復して症状がなくなれば「やっぱり天気だったんだ」と納得ができます。すると次回からまずは「天気のせいかも」と思えるので、焦ったり深刻になったりすることが減っていきます。
もし天気が回復しても症状が残るようなら病院受診をおすすめします。

そのほか、可能であれば日ごろから自律神経を整えるような取り組みをしておくといいでしょう。一般的に言われるものとしては、「良質の睡眠をとる」「ぬるめのお湯での入浴」「軽めの運動・ストレッチ」「ハーブティーを飲む」などがありますが、自分にあっていそうなものや取り組みやすいものからやってみるとよいでしょう。