作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。今回、高橋さんがつづってくれたのは、毎月29日になるとちょっぴり意識をしてしまうお肉についてです
第8回「肉の日!」
●「肉が食べたい!」は人間の本能
私は、普段ほとんど肉を食べない。それなのにどうしたことか、急に肉が食べたくなるときがある。半年に一回くらい「肉の日」がやってくる。
肉! 肉! 肉が食べたい! 焼肉屋さんへ行こう! と衝動的に近所の焼肉屋に走り込むことがあるが、あの肉スイッチは何なんだろう。草食ぶって、育てた野菜や玄米ばかり食べている自分が、突然肉を欲するのだ。ストレスかなあ。いや、人間の本能ではないだろうか。
縄文時代はみんな肉食であった。稲作はまだなくイノシシやマンモスなんかを狩猟して肉ばーっかり食べていた肉食時代があったのだ。弥生時代になって稲作が始まり、日本は貯蔵がきく米中心の食生活に変わっていく。本で読んだことがあるが、縄文時代の日本人の身長は現代の平均身長と同じくらいで体型もガッチリしていたようだ。稲作が始まってから、平均身長がぐんと縮んだと記されていた。私たちはもともとは肉食だったのかと思うと、急に肉曜日になる私の本能にもうなづける。
●愛媛県民はバーベキューが大好き
焼き肉屋さんもいいがバーベキューもいい。愛媛県民はやたらと庭でバーベキューをしたがる。GWの晴れた日に近所を散歩すると、大概の家の庭から煙が立ち上っている。親戚や友達が集まって、お父さんが焼き係で集まった親戚をもてなす。スーパーのお肉コーナーは午後にはなにもなくなり、お肉屋さんは予約をしておかないとすっからかんという状態に!
このとき、どこの部位が好きかという話になってくる。子どもや若者はカルビとかウインナーが好きと答える。そう言ってられるのもあと10年だぞー。我々アラフォー軍団は大概「やっぱ赤身がええよねえ」「私はハラミが好きー」と声をそろえる。
●バーベキューで喜ばれるローストビーフのつくり方
そして、バーベキューも中盤、あの人いなくなったなと思ったら、中でひっそり大人料理をつくっている夫よ。大人のバーベキューは量をたくさん食べられない分、手をかけるのも楽しみのひとつ。
簡単なローストビーフのつくり方をここでご紹介しますね。ブロックで買ってきた赤身の牛肉を、よく熱し油をひいたフライパンにのせ、全面を強火で焼き固める。ある程度全体に焦げ目がついたら、肉を取り出し、アルミホイルでくるんで、さらにタオルにまいて10分間くらい予熱で火をいれていく。
どうせかけるならもうひと手間、ソースをつくりましょう。フライパンから余分な油をふき取ったあとに、アルミホイルに溜まった肉汁を戻し、そこにみりんとしょうゆを入れて一煮立ち。あれば、バルサミコか赤ワインか白ワインを加えるとさらに引き締まる。
さあて、みんなのバーベキューが一段落して長話も退屈になってきた頃、このローストビーフが出てくると「うわーっ!」と歓声が起こるわけだ。外でスライスしていくのも絵になる。なにもバーベキューのときじゃなくても、家でしっかりとつくるのもいいかもしれないね。赤身肉なのでそんなに高くないもうれしいところだ。
中はまだピンク色で外はこんがりと焼けて、ソースをたらすと本格的においしいお肉料理のでき上がりだ。ぜひお家で試してみてほしい。