不妊治療の体外受精によって2017年に誕生した子どもの数は5万6617人で、およそ16人に1人が体外受精児という結果が、日本産婦人科学会によって発表されました。

不妊治療に挑む夫婦が増えている現代ですが、治療をしてもなかなか授かれない夫婦がいるのも事実です。今回、3年間不妊治療を続けている36歳女性に話を聞きました。

絵馬
約2年前(戌年の元旦)に夫婦で書いたという絵馬
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お金と時間、神経がすり減らされる不妊治療

●不妊治療は保険適用外。卵子を取り出す痛い手術に5回も耐えて…

Wさん(36歳)が同じ年の夫と結婚したのは4年前。1年たっても子どもに恵まれないことから、レディースクリニックを受診。それから3年たとうとしています。

「病院に行ったことで授かりにくいということがわかりましたが、ここまで長期化するとは思いませんでした。最初の1年は人工授精を6回もやることになりましたが、毎月ちゃんと生理が来てしまうことに、とても落ち込みました。そこで医師から提案されたのが体外受精です。保険適用外でお金がとてもかかるとは説明を受けましたが、共働きだったこともあり、海外旅行に行ったと思えば…というつもりで挑戦することに。ところが、結果的に400万円もの大金を治療につぎこんでしまいました」

医者と話す夫婦
不妊治療の病院には子を望む多くの夫婦が訪れます(※写真はイメージです)

体外受精は、妻から取り出した卵子と夫の精子を受精させ、体内へ移植する治療のこと。この過程だけでおよそ50~70万円ほどかかります。そのほか、採血やエコー検査で、1回の通院だけでも1~2万円の会計。多いときには週2~3回の通院のため、Wさんの家計をじわじわ圧迫していきます。

「卵子を取り出す手術は、局所麻酔はするもののとても痛くて、合計5回も行いました。私はそもそも卵子の量が少なく、1回に1~2個ほどしか採れない。しかも受精卵として凍結に至らないことも多く、なかなか移植へ進めませんでした。なんとか半年くらいかけて5個の受精卵ができました。病院の方針では2人目のことも考えてできるだけ多く凍結しておくというのです。これだけで150万円の治療費でしたが、ようやく移植というスタート地点に立てるということに希望もありました」

●待望の妊娠…夫婦で喜んだつかの間「赤ちゃんの心臓止まっています」

Wさんの夫は結婚した際に「子どもが欲しい。父親にならない人生は考えられない」と話していたものの、治療をすることに関してはネガティブでした。お金が膨大にかかることや、妻にばかり身体的負担がかかってしまうことに負い目を感じていたそうです。

「それだけに、夫は時間があれば一緒に病院に付き添ってくれました。医師から『とてもいい受精卵が採れたし、Wさんの内膜の厚さも申し分ないし、初めての移植は期待できそうですね』という言葉に夫はわくわくしているようでした。やっと夫を父親にできるかなと私もうれしくなりました」

ところが初めての移植は妊娠反応が出ず。明るい未来を描いていたはずが、現実を目の当たりにします。体外受精は1回で成功する人もいれば、何度も移植にトライする人も多くいます。そこには、受精卵そのものや母体など、さまざまな要因が潜んでいますが、いわば「移植してダメだった場合に原因を探る検査をする」というのが現実のようです。

「着床不全の検査などさまざまな提案をされ、すべて保険適用外の治療費がかかることにとてもストレスを感じました。でも、今さらやめることができない。痛い検査や投薬治療にさらに数か月費やし、2度目の移植でようやく妊娠が確定しました。夫は『たまひよ』など妊娠出産にまつわる雑誌を数冊買ってきてくれ、これから起こる未来への喜びを日々、分かち合いました。ところが、胎嚢確認、心拍確認を経て、妊娠7週目のエコー検査で言い渡されたのは、『赤ちゃんの心臓が止まっていて、姿もはっきりしない』でした」

●2度の流産宣告。「もう妊娠するのが怖い」

流産を宣告されたWさんは「頭が真っ白になった」と当時を振り返ります。