インターネットは気軽に調べられる反面、ウソの情報もたくさんあります。とくに健康にかかわる情報は、しっかりと見極めたいもの。
「とくに個人の経験談のなかでも、『これで病気が治った』『まったく効果がない薬だ』などは、ごく一部の極端な意見が書かれている可能性もあるので、うのみにしないことが大事です」と話すのは、医師の秋津壽男先生。
ネットで見た気になる情報はかかりつけ医に相談を
「もし、気になる情報に出合ったら、かかりつけ医に相談するのがおすすめです。医学知識を基に、正しい情報とそうではない情報を取捨選択し、適切な助言をもらえるはず。日頃から医師と信頼関係を築いておくといいでしょう」
ここでは秋津先生に、運動と健康に関する風説についてジャッジしてもらいました。
●スポーツをしない方が長生きする→ホント
すべての画像を見る(全3枚)健康のためになにか始めようと考えたとき、真っ先に「スポーツ」を思い浮かべる人は少なくないでしょう。しかし、驚くべきことに「スポーツはやればやるほど寿命を縮める」のです。
もちろん、長生きするには、適度な運動が欠かせません。しかし、スポーツとなると、「他人に負けたくない」とムキになったり、勝負へのこだわりから体調が悪いのに続けてしまったり…といったことが起こりがち。やめたいと思ってもやめられなくなってしまうのです。がんばりすぎは百害あって一利なし。体調と相談しながら、ほどほどの運動を取り入れて。
●脂肪燃焼には食後の運動が効果的→ウソ
効率よく脂肪を燃やすためのポイントは「空腹感」。食後ではなく、おなかが「グー」と鳴っているときの方が断然やせやすいタイミング。空腹時はエネルギーの源である糖分が少ない状態です。すると、体は蓄えている体脂肪を利用し、たりないエネルギーを補おうとします。つまり、脂肪が燃焼するわけです。
おなかがすいているときこそ、ぞうきんがけや庭掃除など全身を動かす家事や簡単なストレッチ、軽いウォーキングなどを行って。ただし、急に激しい運動をすると、体に負担がかかることも。あくまでも軽めの運動を心がけましょう。
●年をとると筋肉はつかない→ウソ
年齢を重ねると次第に筋力は衰えていくもの。では、年をとると運動しても筋肉はつかないか、というとそうではなく、何歳になっても筋肉は鍛えられます。むしろ、年をとっている人こそ、筋肉を鍛える努力をすべき。筋肉が衰えると転倒リスクが高まり、骨折をはじめとしたけがの要因に。
けがをして歩けなくなると、一気に老化が進んでしまうので、日常生活に必要な筋肉を適度に鍛えましょう。50歳~60歳代の人なら、1階から3階まで階段で上がれることを目標にして。ペースはゆっくりでかまわないので途中で休むことなく、上がりきれたら合格です。
●早朝ランニングよりウォーキング→ホント
「朝早く起きてランニングをする」と聞くと、いかにも健康によさそうですが、あまり望ましい習慣とはいえません。朝は血圧の上昇と夜間の脱水で、血液が凝固しやすくなっています。そんなときにランニングをすると、脈拍が増えることでさらに血圧が上昇し、心筋梗塞のリスクが非常に高くなります。また、体温も十分に上がっておらず、筋肉も固まっているため、筋肉の繊維や腱けんを痛める恐れも。
ランニングをする場合は、下記の目安を守って取り組んで。さらに、健康のためには、過剰な負荷をかけないウォーキングがおすすめです。余裕が出てきたら、3分走るのと、3分歩くのを繰り返すインターバルウォーキングにも挑戦を。
<もしランニングをするなら気をつけたいポイント> ・時間:早朝は避ける ・早さ:時速8~11.2km ・距離:1週間で3kmまで ・頻度:1週間に2~5回まで●軽い筋肉痛なら運動を続けるべき→ホント
健康のための運動は「無理のしすぎは禁物」。では、どれぐらいの運動量を目指せばいいのでしょうか。これは、「筋肉痛の度合い」がひとつの目安になります。筋肉をつけるのが目的であれば、軽く筋肉痛になるぐらいがベスト。筋肉は負荷によって筋組織が破壊され、再生するときに、「筋肉がつく」という状態になります。
もし、まったく筋肉痛にならないなら、気持ちよく体を動かせたとしても、筋肉はつかないのです。もっとも、翌日になって、箸や茶碗の上げ下げにも苦労するような筋肉痛は“やりすぎ”のサイン。運動量を調整しましょう。
●「腕立て伏せ」と「スクワット」。老化防止に効果があるのは→スクワット
老化を防ぐために重要なのは「スクワット」。下半身が衰えると、歩行力が低下し、認知症の要因にも。一方、見た目の若さを保つ場合は、上半身の運動も重要。首下から胸の筋力が落ちると、一気に老けて見えます。上半身と下半身を同時に鍛えるなら、水中ウォーキングが効果的です。