インターネット上にあふれる健康情報は玉石混交。素人が見極めるのはなかなか難しいものです。
そこで医師の秋津壽男先生に、気になる健康常識のウソ&ホントを教えてもらいました。間違った健康常識を実践していないか要チェックです!
その健康常識、本当に合っていますか?医師がジャッジ!
●「花粉症対策にはマスクより”鼻を濡らす”方が効果的」はホント
すべての画像を見る(全2枚)ブタクサやヨモギ、カモガヤ…。秋は花粉症がひどくなる時季です。
花粉症対策としてポピュラーな「マスク」。花粉には湿気に弱いという性質があり、マスクを着用することで、マスク内の湿度が高くなると、花粉の吸収が抑えられるという効果があります。布マスクを濡らしておくのもいいでしょう。
ただ、一定の予防効果はあるものの、花粉の粒子は非常に小さいため、呼吸をするたび、マスクの隙間から花粉が入ってきてしまうことも。
そこで、おすすめなのが鼻の粘膜をワセリンなどで濡らすという方法です。鼻の粘膜が乾燥していると花粉に反応しやすくなります。鼻の粘膜にワセリンを塗っておけば、花粉が粘膜に直接触れることもなく、花粉症予防に役立つというわけです。
●「漢方薬には副作用がない」はウソ
漢方薬は「自然のものからつくられているから安心。副作用もない」と思っている人も多いようですが、それはまったくの間違い。漢方薬による副作用の症例も、多数確認されています。
また、漢方薬は、数種類の成分が混合されているため、効能が違う薬でも重複して飲むと、同一の成分を過剰にとり、重い副作用を招く危険があります。医者から見ると、漢方薬は西洋薬以上に服用に気をつけてほしい薬だといえるのです。
複数の科、医院で診療を受けている場合は、すでに服用している薬をしっかり伝えましょう。
●「いびきを放っておくと危険」はホント
いびきが大きくて悩んでいる人は要注意。その大きないびきは最近増えている「睡眠時無呼吸症候群」のサインの可能性もあります。
鼻とのどの形が悪くて起きるいびきは、うるさいだけで問題ありません。しかし、いびきをかいていたかと思うとピタッと息が止まるような場合は危険です。睡眠時無呼吸症候群は息が苦しくなるため、寝ていても疲れがとれず、昼間眠くなることもしばしば。
無呼吸状態が続くと心臓に負担がかかり、高血圧症や脳卒中などの合併症リスクも高まります(下記参照)。心当たりがある場合は、睡眠外来などの専門医で受診を。
<睡眠時無呼吸症候群の合併症リスク(健常者と比べて)>
・高血圧症:約2倍
・狭心症、心筋梗塞:2~3倍
・慢性心不全:約2倍
・不整脈:2~4倍
・脳卒中:約4倍
・糖尿病:2~3倍
※出典:循環器病の診断と治療に関するガイドライン2008-2009合同研究報告 「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」
●「体調不良を感じたら大きな病院に行くべき」はウソ
総合病院や大学病院は高度な医療設備を用意している反面、患者さんを多数抱えているため、一人ひとりの体の変化に気づきづらいというデメリットも。体調不良のときは、まず近所のかかりつけ医で受診しましょう。できれば総合内科が望ましいです。
いきなり大病院に行っても、状況がわからないまま待たされ、時間をロスする可能性が高いもの。まずはかかりつけ医に診てもらい、必要に応じて信頼できる医療機関を紹介してもらうのがベスト。
心筋梗塞など一刻を争う状況であれば、その場で救急車を呼び、しかるべき医療機関に搬送してくれます。
●「年齢とともに記憶力は落ちる」はウソ
年齢を重ねるにつれ、テレビを観ていても、芸能人の名前がとっさに出てこなかったり、ものの置き場所を忘れたりといったこともしばしば。記憶力が落ちてきたのでは、と不安を覚える人もいるでしょう。
しかし、最近の研究によると「脳の能力は衰えない」という事実がわかってきています。どうでもいい記憶を忘れるのは、脳が正常に働いている証拠です。
自宅の住所や電話番号を忘れては大変ですが、昔の女優の名前など「必要ではない情報」は忘れてしまっても大丈夫。
どうしても気になるなら、がんばって思い出してみて。そのこと自体が記憶力をさびつかせないためのトレーニングになりますよ。