朝ご飯に、お風呂上がりに、牛乳を飲むのを毎日の習慣にしている人も多いのでは?
そんな牛乳のもととなる「生乳」を生産するのが酪農の仕事です。
酪農の現場が今、どんなことになっているのか?ESSE読者親子が牧場の仕事を体験。酪農家の生の声にふれ、その現状と問題点をたっぷり聞いてきました。

酪農家から学んだ“牛乳が毎日飲めること、酪農の今を知ること”の大切さ

「牛乳ってどうやってつくられるんだろう?」と、好奇心いっぱいに酪農を体験したのは、佐藤美由紀さん親子と沖樹莉亜さん親子。
彼女たちが訪れたのは、神奈川県内の住宅街で酪農を営む柿澤牧場。エサやりから搾乳まで、初めての経験にドキドキしながらも、果敢に挑戦!牛乳や乳製品のもととなる「生乳」ができるまでを実際に体験し、酪農家の仕事の大変さを肌で感じました。
体験後は、おいしい牛乳をいただきながら、酪農家をとりまく環境の変化や現在の酪農事情について伺いました。

●「牛乳はいつでも手軽に買える」。その当たり前の裏には酪農家の努力あり

「牛乳はいつでも手軽に買える」。その当たり前の裏には酪農家の努力あり

「おいしい牛乳が毎日飲めるのは、酪農家さんのおかげなんですね」

乳牛という生き物が相手の酪農の仕事は、早朝から夜まで毎日休みなし。どんなに大変なことかと思いますが、「祖父が始めたこの牧場で小さい頃から育ったせいか、つらいと思ったことはありません。決まった時間に始まり、エサやり、掃除、搾乳、堆肥づくりと毎日同じリズムで動けるので慣れると意外と大変ではないんですよ」と話すのは、柿澤牧場の柿澤博さん。

博さんはこの牧場の3代目になりますが、祖父が始めた当初とは変わってきている部分もあるそう。

「たとえば台風などの自然災害の頻発や、夏の暑さが過酷になっていることです。大きな扇風機やミスト発生装置の設置など対策はしていますが、牛は暑さに弱いので…。生産が環境に大きく影響を受けるのが難しいところです」。

それでも大きな変動もなく毎日手頃な価格で牛乳が買えているのはありがたい話。簡単にはコントロールできない環境の中で、人知れず時間と手間をかけている努力があってこそなのです。

●酪農家の思いや熱意がこもっている。だから日本の牛乳はおいしい!

牧場というと郊外にあるイメージですが、柿澤牧場があるのは住宅街の中。とくに気を遣っていることを伺うと、「においですね。こまめな掃除やフンの処理などにおいの管理には気を遣っています。牛舎を清潔にしておくことは牛のためにも大切ですから」と柿澤さん。
一方で、地域の方と交流を深めながら経営していけるという都市部ならではのよさもあるそう。
「幼稚園児や小学生を対象に、『食やしごと、いのち』について学んでもらう『酪農教育ファーム活動』を行っていますが、そのくらいの年齢で経験したことは一生心に残ると思うんです。牧場に来てくれたある子どもが、ここでの体験がきっかけで獣医になったと聞いたときは、驚きましたし、嬉しかったですね。今後もいろいろな形で地域への貢献ができたらと考えています」

体験して初めて知ったことも多く、子どもたちにとってもとてもいい経験に

体験して初めて知ったことも多く、子どもたちにとってもとてもいい経験に。「国産100%の牛乳が毎日おいしく飲めるのはみなさんのおかげだと実感したので、感謝をしつつこれからも毎日飲みたいです」

近年の酷暑や台風などの災害…。 自然に左右される厳しい酪農の生産環境

日本の酪農家は大変厳しい状況に置かれています。酪農業界を取り巻く環境の変化と、現在の事情を伺いました。

●酪農は自然の影響を受けやすい

牛乳や乳製品は、私たちにとって基本的な食料のひとつ。その原料となる「生乳」をつくることが酪農の仕事です。生き物が相手なだけに、仕事に休みはなく、労働時間も長くなりがち。牛乳・乳製品の需要は増加していますが、さまざまな理由から、酪農家の戸数はピーク時から激減しています。
そのようななか、安定して国産牛乳を供給するために酪農や乳業の関係者は「需給調整」を行っています。生乳の生産量は、暑さで乳牛の体力が落ちる夏場には減少し、冬場に増加。一方、需要は牛乳を中心に夏場に増加、冬場は減少という逆の傾向に。消費地の都府県の牛乳需要に対応するため、年間を通じて主産地である北海道から生乳を輸送していますが、夏場は輸送量を最大化して牛乳の製造を行い、冬場から春先は生乳生産が牛乳需要を上回るため、保存性が高いバターなど乳製品を多く製造するという工夫をしているのです。
しかし近年は、酷暑によって生産量が想定以上に減少したり、多発する台風や地震などの自然災害による生乳廃棄の発生、北海道からの生乳輸送がストップするなど、努力だけでは解決できない事案が発生する現状も。「牛乳はいつでも気軽に飲めるもの」とは言えなくなっているのです。

酪農は自然の影響を受けやすい

●たりないからと輸入に頼るのは危険!

たりなければ輸入すればいいのでは?と思ってしまいますが、世界の牛乳・乳製品の生産量(約8億トン)のほとんどは自国内で優先的に消費され、輸出に回るのは1割未満。さらに、輸出できる国も限られます。
また、気象の影響を受けやすいのはどこの国も同じで、干ばつなどによりいずれかの国の輸出が減ると、国際価格が急騰するというリスクもあります。

●生乳の生産だけでなく酪農にはさまざまな役割が

生乳の生産だけでなく酪農にはさまざまな役割が

酪農は、牛のフンや尿を田畑の肥料として還元することで、日本の「循環型農業」の基軸を担っています。

それと同時に、使われなくなった田畑を牧草地などとして活用することで、国土保全と里山の景観や環境の維持にも役立っています。

さらに、酪農を通して「食やしごと、いのち」について子どもたちに学んでもらう「酪農教育ファーム活動」を行う酪農家もいます。

牛乳・乳製品のもととなる生乳をつくるほかにも、「酪農」には、地域を支えるいろんな役割があることがわかりました。

今回、牧場の仕事を体験した子どもたちが大人になってからもなお、気軽においしく牛乳を飲み続けられるように、酪農業界を取り巻く環境の変化と、抱える問題点を知ること。それがなにより大事なことなのかもしれません。

●柿澤牧場

柿澤牧場

牛の健康を重視した飼育はもちろん、酪農教育ファーム活動など地域に溶け込む牧場経営を行っています/神奈川県茅ケ崎市甘沼245 ☎0467・54・8355

Instagram「mama+」(ママタス) で動画も配信中!

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【応募規約】
・ご応募は日本国在住者(登録住所が日本国内)の方に限ります
・賞品の換金および権利の譲渡はできません

●問い合わせ先 

(一社)中央酪農会議  

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