50歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した長男・うーちゃん、里子の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は少したくましくなったうーちゃんのお話。
転んで泣いてもすぐに立ち上がるのはえらい!
ぼくは体力づくりで、10日に2回くらいのペースで10キロ走っているのですが、走りに行こうとすると毎回うーちゃんが一緒に来たがります。うちの最寄りはA駅なのですが、その隣のB駅まで行って遠回りして帰ると大体10kmです。
すべての画像を見る(全4枚)うーちゃんは「ぼくもB駅まで行きたい」と言います。根性なしのうーちゃんを連れて行ったら途中で根を上げて抱っこさせられるに決まっています。
とりあえず、最寄りのA駅まで一緒に走ることにしました。A駅までは1km弱です。行きはすぐに足が痛いと言い出し、何度も歩いたり、しゃがみこんだりしました。こんなことではB駅なんて絶対に無理です。そこで、A駅から自宅までの帰り道、もし途中で休んだり抱っこと言わずに走りきれたら、次に走りに行くときにB駅まで連れて行くよと言いました。
すると、途中で休んだり、歩いたり、しゃがみ込んだりもせずA駅から自宅まで完走しました。その後、ぼくが一人でいつもの10km走りに出かけると、一緒に連れていけと言って怒って、置いていくと泣き出しました。今日連れて行くとは言ってないのに。
そして後日、B駅までうーちゃんと一緒に走りました。子どもと一緒なので1km10分くらいの超ゆっくりペースです。
いつものゴールのA駅では売店でアイスを食べるのですが、この日は通過点にすぎません。
うーちゃんは「なにか買いたい」と言いましたが、まだ走り始めたばかりで休憩をするわけにはいかず無情に通りすぎました。線路と並行した住宅街をゆっくり走って行きます。
そうして走っていると、うーちゃんが途中で派手に転んでひざとひじをすりむきました。
「うわー!」
地面に突っ伏したまま派手に泣くので抱きかかえて起こしました。
「じゃあママに迎えに来てもらうか」
そろそろ限界かなと思い、リタイヤを提案しました。普段のランニングではスマホは持たないのですが、今回はなにがあるかわからなかったので持参していました。すると、すぐに泣き止んでまだ走れると言います。
走り出してしばらくすると、住宅街を抜けて両側が田んぼの農道になりました。農道を抜けると、また住宅街になります。車とすれ違うときは道のわきに寄って車をよけますが、それ以外は足を止めません。
そうしているうちにB駅に到着しました。遠回りせずにB駅まで走ると3.6kmくらいでした。B駅は無人駅で売店も自販機すらないため、うーちゃんはがっかりした様子。帰りは電車に乗ってA駅に戻りました。
転んですりむいた傷は、転んだ直後は赤くなっていただけだったのですが、その頃には血がダラダラ出ていて、それを見たうーちゃんは途端に痛がりました。ぼくは電車で休んでいたら体がすっかり冷えてしまったので、うーちゃんをおんぶして家まで走りました。
すると「ぼくがケガをしたから走ってくれたんだね」とひどく神妙な顔で感謝の気持ちを述べるのです。寒かったからだとはとても言えません。「そうだよ」と言いましたが、心苦しくなりました。
「うーちゃんがB駅まで走ったよ」
家族に伝えると、「すごいね!」と言ってはくれたのですが、なにしろ膝と肘からの出血がすごかったため、手当をしなければならず、そっちの印象にもっていかれてしまいました。