自然災害が多い日本では、日頃から防災意識をもち、備えておくことが大事。住んでいる地域が大規模な停電に陥った際、災害発生から数日たってもなかなか復旧しないケースも想定されます。
今回は、湯せんで同時に2品が完成する「防災レシピ」をご紹介。試してくれたのは、料理やグルメについて執筆しているライターの朝岡真梨さんです。
ひとつの鍋で同時に調理できる。試しておきたい湯せんレシピ
もしも災害によって電気が止まってしまったら…。そんなとき、ガスコンロなどの限られた火力はとても貴重です。
救援物資のおにぎりやパンなどといった冷たい食事が何日も続く状況は、精神的にもつらいもの。
災害時の食事のバリエーションを増やすために、家庭で工夫できるアイデアとして、ポリ袋で湯せんをする調理法に注目が集まっています。一度に複数の料理を同時に調理できるので効率的。
包丁もまな板も使わずに手軽につくれる湯せん料理のレシピをご紹介します。
●好きなシーフードの缶詰を入れて炊くトマトライス
【材料(2人分)】
・無洗米 1カップ
・トマトジュース 1カップ
・水 1と1/2カップ
・ツナ缶 1缶(今回は70g入りのものを汁ごと使用しました)
・チーズかまぼこ 1本
・十六穀米のもと 1袋
今回はツナ缶を使用していますが、サバ缶やホタテ缶などシーフード系の缶詰でも大丈夫です。チーズかまぼこも、プロセスチーズやとろけるチーズなどで代用OK。十六穀米のもとは、多彩な栄養がつまっているので、栄養が偏りがちな災害時に準備しておくといいですよ。
【つくり方】
(1) ポリ袋の中に、すべての材料を入れて軽く混ぜ合わせ、15分くらい浸水させておきます。
チーズかまぼこは一口サイズに指でちぎって入れましょう。
(2) 鍋底に耐熱皿を敷き、お湯(分量外)を沸かしておきます(耐熱皿は、ポリ袋が鍋底に直接ふれて高温になりすぎないようにするために必要です)。
(3) (1)のポリ袋はできるだけ中の空気を抜きながら、袋の口の上の方をしっかり縛って(2)の鍋の耐熱皿の上にのせるように沈めます。
火加減は弱火でお湯が常に小さくフツフツしているくらいを保つようにします。この状態で40分間湯せんしたらできあがり。
袋の上部をハサミでカットすると、フワッとツナのいい香りがいっぱいにたちこめます!
お皿の上にポリ袋ごとのせてそのままいただけば、災害時の洗い物を減らすこともできます。
炊き上がりのご飯と同じように、底の方からしっかり混ぜ合わせていただきましょう。
ごろっとしたチーズかまぼこのおかげで食べごたえも十分。
災害時にぜいたくは言えませんが、白いご飯に飽きてしまったときに、炊きたての温かいトマトライスがあったら元気が湧いてきそうです。
●甘い香りがたまらないあったか蒸しケーキ
【材料(1人分)】
・ホットケーキミックス 50g
・牛乳 40ml
・サラダ油 小さじ1
・板チョコ 1/3枚
オイルはしっとりさせる効果を出すために入れますが、家でいつも使っているものでOK。もしなければ、マヨネーズでも代用できます。
(1) ポリ袋の中にすべての材料を入れます。板チョコは一口サイズに折って入れましょう。
袋ごとよくもんで混ぜ合わせます。ボウルなどを使わなくてすむので、洗い物も減らせます。
(2) あとはトマトライスと同じ要領で、ポリ袋はできるだけ中の空気を抜きながら、袋の口の上の方をしっかり縛って、30分間湯せんしたらできあがり。
少し冷ましてからなら、お皿なしでもポリ袋を持ったままかぶりつくように食べられます。
ところどころにチョコレートの甘さが味わいの変化をつけてくれる蒸しケーキ。素朴な材料だからこそのほっこり笑顔がこぼれるおいしさです。
●あいているスペースで好きなものを温めよう!
ポリ袋の湯せん調理は、貴重なお湯を繰り返し何度でも利用できるのがいいところ。大きめの鍋なら、複数の料理を複数人分同時につくることもできます。
今回は、あいているスペースを利用して、湯せん時間のラスト10分に卵を入れてゆで卵もつくりました。トマトご飯に添えてもよく合いますよ。
湯せん調理ができるポリ袋を防災グッズの中に準備しておこう!
湯せん料理には、普段使っている冷凍食品や野菜を小分けにするようなフリーザーバッグやポリ袋は使えません。
耐熱温度が100℃であっても裏面の注意書きをよく見ると、湯せん調理や煮沸には使用できないのだそう。
湯せん調理をするときには、食用高密度ポリエチレン製の「湯せん調理可能」と明記されているポリ袋を使ってください。
今回使用したポリ袋は、ネットで40枚600円ほどで販売されていた日本製のもの。燃やしても、塩化水素などの有毒なガスが発生しません。丈夫でしっかりしていて使い勝手がよかったので、防災グッズとして買いたしておくことにしました。
災害が起きたことを想定して食事をつくってみると、いざというときにどんな道具が必要になりそうか、事前に把握することもできます。
普段の当たり前の便利な生活が、自然災害で一瞬でストップしてしまうことも。家庭での準備や工夫が、ピンチを助けてくれるかもしれません。