子どもや周囲の人に迷惑をかけないためにと、近年広まりつつある「終活」。
「ご自身の最期を自分ごととしてとらえ、主体的に行動する方が増える一方で、『親孝行をしたい』と考えるお子さんと考えが行き違ってトラブルに発展することも」と語るのは、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さん。
今回は、葬儀の現場でよく聞かれるトラブル例をもとに、裕子さんという人物を例にして、終活のありがちなトラブルについて語っていただきました。
※写真はイメージです
家族で入るお墓が2つに!?じつは年配の方が洋風のデザインを希望していることも
裕子さん(仮)は、地方都市で暮らす50代。70代となる裕子さんの母は、夫との離婚後、女手ひとつで裕子さんを育てあげました。
実家と疎遠で入るお墓のない母のために、裕子さんは「あらかじめお墓を建てて母を安心させよう」と決心。母が住む家の近所にあるお寺が所有している霊園に区画を購入し、150万円ほどかけてお墓を建てました。
母を驚かせるため、お墓のことをずっと伏せていた裕子さん。完成から数日経って、「お母さん、入るお墓がないでしょう? 私も将来入るからと思ってお墓を建てたの」と告げました。しかし、母は浮かない顔。詳しく聞くと、なんと母も内緒でお墓を建てていたのです!
「どちらかひとつのお墓に入ろう」と話し合い、もったいないけれど片方は取り潰すことに。
母は民間霊園に洋風のかわいらしいお墓を建てていた一方、裕子さんの建てたお墓はお寺らしい伝統的なスタイルでした。母はそのデザインや立地が気に入らない様子で、ちらりと見るなりすぐ踵を返す始末。
やむなくお寺側に事情を説明し、区画の返還と墓石の撤去を申請。そして区画購入時に檀家登録していたため、離檀を申し入れました。
墓石の撤去費用だけですむと思っていた裕子さんですが、お寺から届いた請求書には事務手数料や整地料など想定外の項目が目白押し。お寺からの離檀料も合わせ、墓じまいには合計100万円ほどかかることがわかりました。
お墓購入のために何年も貯金していた裕子さん。手元にあるお金は多くなく、100万円は家計に対して大きな負担です。しかし今さら母に頼るわけにもいきません。支払いの期限が迫るなか、裕子さんの苦悩は続いています。
タブー視せず、お墓の方針について家族で共有しておこう
裕子さんのお話、いかがだったでしょうか。終活を考えるうえで欠かせない「お墓」ですが、このように思わぬトラブルに発展することも。
裕子さんはどうすれば、この問題を防げたでしょうか。
このエピソードの大きな特徴は、お墓についての要望や現状を親に確認せず、情報共有しなかったこと。裕子さんの場合はサプライズを仕かけていたため、ことさら確認が難しかったことでしょう。
ただ、もしかしたら以下のようなことを行うことで、今回の事態を防げたかもしれません。
●ポイント1 お墓の方針について親と確認しておく
お墓は必要かどうか? 入ることのできるお墓はあるのか否か? などを率直に話し合っておくことで、ムダな手間をかけずにすむ可能性があります。
●ポイント2 購入前にお墓に関する希望を共有しておく
お墓のデザインやイメージはもちろん、霊園までのアクセスや、霊園の経営母体についてなどの希望をすり合わせていくことで、家族全員が満足できるお墓に近づきます。
ご本人、お子さん双方がお墓について考えていたこと自体は、とてもよいこと。ですから、親子で一緒に考えて、お互いの意見を話し合いながら答えを探すことができれば、より理想的な方法が見つけられるはず。
皆さんも、ぜひ勇気を出して、オープンに話し合ってみてください。