ムーミンの生みの親・トーベ・ヤンソンを描いた映画『トーベ/TOVE』が公開中です。ザイダ・バリルート監督のインタビューも交えて、ムーミンが生まれた背景を探ります。

ムーミンイラスト
ムーミンが生まれた背景とは?<(c)2020 Helsinki-filmi,all rights reserved>
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ムーミンのキャラクターは、作者トーベ・ヤンソンの周囲の人々がモデルだった

世界中で愛されているムーミンは、北欧生まれの児童文学。その人気の理由はなんといっても個性的なキャラクターたち、そして哲学的でもあり共感を呼ぶ思想です。

ペンをかじる様子
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映画『トーベ/TOVE』を観ると、ムーミンの世界に登場するキャラクターは、作者のトーベ・ヤンソンの周りに実在した人たちがモデルになったことがわかります。

絵を描く様子
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緑の帽子のスナフキンは、政治家・哲学者・作家・ジャーナリストのアトスがモデルと言われています。1943年、トーベとアトスは出会ってすぐに惹かれ合い恋人でもありましたが、同志的な強いつながりを持っていました。アトスはトーベのよき理解者であり相談相手でした。

絵を描く人
<映画に登場するトーベ・ヤンソンの母、シグネ・ハンマルステン=ヤンソン(c)2020 Helsinki-filmi,all rights reserved>

いつも家族のために色々仕事をしているムーミンママは、画家であった母がモデルに。

立体物と男性
<映画に登場するトーベ・ヤンソンの父、ヴィクトル・ヤンソン(c)2020 Helsinki-filmi,all rights reserved>

冒険家でロマンチックなムーミンパパは彫刻家であった父が投影されています。
父に認められたかったトーベと、娘に素直に愛を伝えられない父。しかし父親の存在なくしてムーミンは生まれなかったかもしれません。

演劇の様子
<ヴィヴィカとの出会いにより実現した演劇『ムーミントロールと彗星』(c)2020 Helsinki-filmi,all rights reserved>

お互いにしか通じない言語を持ち、言葉遊びで読者を楽しませてくれるトフスランとビフスランというキャラクターもいます。そのモデルは、トーベ自身と演出家のヴィヴィカ。
1946年、トーベはフィンランドの演劇界に新風を吹き込んだ演出家ヴィヴィカと出会い、そして自分の心に正直に生きると共に、ムーミンを世に出す機会を得ました。

ひとりぼっちでさみしがりやのトゥーティッキのモデルは、1955年にトーベと出会ったトゥーリッキ。トゥーリッキはフィンランドの美術史に名を残す実績を誇る人物であり、トーベの生涯のパートナーとなりました。

●純粋で正直なトーベが私たちに気づかせてくれること

白服女性
<フィンランド人映画監督:ザイダ・バリルート氏 Copyright Marica Rosengard>

トーベ・ヤンソンが踊っている姿が本映画のメインビジュアルとなっているように、「彼女のリアルなポートレートとして映画をつくりかった」と、フィンランド人女性監督のザイダ・バリルートは語ります。

襟付き服女性
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「私自身が惹かれて驚きの多かった、若いトーベの10余年を描くことにしました。多才で機知に富んだトーベがアーティストとして葛藤し、自分の内なる声を聞き、居場所を見つけるまでの期間です」

激しい戦争に巻き込まれた幼少時代。著名な彫刻家で厳格な父との軋轢や、保守的な美術界との葛藤の中で満たされない日々を送った若き時代。
その中で、若い芸術家たちとのパーティや恋愛や様々な経験を経て、自由を渇望するトーベ・ヤンソンの強い思いはムーミンの物語とともに大きく膨らんできます。

シルクハット女性
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1914年生まれのトーベ・ヤンソンが、苦悩の中で自由をつかみ取り、奔放な恋愛も含めて素直な愛情表現をする様は、「もっと自分に正直でいい」と現代の女性に気づきを与えてくれるのではないでしょうか。
とくに日本では、世間体や空気を気にして、自分を押し殺すことも。もちろん社会の調和のために協調性も必要ですが、北欧女性から学べるのは、もっと自分に正直で、自由でいいということです。

部屋で絵を描く様子
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ザイダ・バリルート監督に「自身と、トーベ・ヤンソンの共通点は?」と聞くと、「野心的であること」と答えてくれました。

「大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかってるってことだよ」
―スナフキン(『ムーミン谷の夏まつり』より)

映画『トーベ/TOVE』は、10月1日より全国ロードショー