52歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した7歳の長男・うーちゃん、里子の3歳の長女・ぽん子ちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は、ランニング大会をがんばるうーちゃんのお話です。
運動が苦手なうーちゃん。ランニング大会の成績は…?
小1の養子のうーちゃんの小学校で、ランニング大会がありました。
すべての画像を見る(全4枚)近くのサッカースタジアムを借りきって、全学年ごとに2組に分かれて時間を分けて走ります。最初が3年生、次が4年生、1年生、2年生、5年生、6年生の順番でした。
父兄はスタジアムからの応援です。間隔をあけるように指示がありますが、スタジアムはとても広くて密にならないので、とくに人数制限もありません。ママはアルバイトだったため、僕とおばあちゃんで行きました。
当日は雨の予定だったのですが、青空で日差しが暑いくらいのすばらしい陽気でした。
●日頃、運動不足のうーちゃん。走る練習もしてくれません
最初に開会の挨拶、全校でのダンスが準備体操の代わりにありました。そしていよいよ3年生からレースが始まります。
3年生と4年生は800m、1年生と2年生は600m、5年生と6年生は1000m走ります。
全校参加なので、速い子はさっそうと駆け抜けて行きますが、なかには足が遅い子や体が小さい子、走るのが下手な子もいて、見ていてなんだか胸が痛みます。
思い返すとうーちゃんは保育園のときに足が2番目に遅くて、運動系の行事ではなにひとつ活躍できないままでした。
少しでも体力がついて運動に対する苦手意識をもたないようにたびたび僕のランニングに誘っていましたが、夏休みはとうとう1回しか一緒に走ってくれませんでした。
僕は10kmか11km走るので、なんなら自転車で一緒について来るのでもいいかと思いましたが、極端に怖がりなせいでいまだに自転車に乗りたいとか、自転車がほしいとも言いません。周りのお友達はわりとみんな軽々と乗っています。
大会の前日は走る練習をする約束をしていましたが、お友達の家にカナヘビを捕まえに行くと言って断られました。無理強いはしてもしかたがないので、しない方針ですが、こんなのばっかりです。
●うーちゃんらしき人影が、大健闘の15位!?
そしてサクサクと順番は進んで、うーちゃんの1年生1組の順番が来ました。うーちゃんらしき人影が見えるのですが、なにしろスタジアムから遠いのではっきりと区別ができず、あの子かなあと目星をつけました。うーちゃんから1組か2組なのか確認を取るのを忘れていたのです。
スタートは、グラウンドの対角線の向こう側でした。
ようい! ピッ!
いっせいに走り出します。うーちゃんらしき子が懸命に走って30人くらいの真ん中あたりです。600mは一周半です。僕らの前を通り過ぎてもう一周してこちら側がゴールラインです。
僕らの前を通っても、僕は視力が弱いためうーちゃんだとははっきりと確認できないまま応援しました。声を出しての応援はNGなため心の中で「がんばれがんばれ」と叫んで、拍手です。
1着の子がゴールラインを駆け抜けて、次々ゴールして、うーちゃんらしき子がゴールに向かって走ります。最初と変わらず15番目くらいでゴールしました。本当にうーちゃんでしょうか、うーちゃんがそんなに足が速いわけがない。次の組ではないでしょうか。
春の運動会では、50m走で、4人中3位でした。ビリじゃない、すごい! と思いました。
そして次の1年生2組がスタートすると、うーちゃんらしき子はいません。やっぱりさっきの15位がうーちゃんだったのかな。隣で見ていたおばあちゃんも視力はとても悪いので二人で半信半疑のままでした。
●早寝早起きのおかげかも!体力のついてきたうーちゃん
5年生や6年生のレースを見ていると、体力の差がさらに広がっています。普段まったく体を動かさない子なのかな、周回遅れになる子も目立ち、本当に気の毒で心が苦しくなります。
うーちゃんがそうはならないように、なんらかの運動習慣を身につけさせておかねばならないと痛感しました。
今は『ドラベース』という未来のいろいろなドラえもんが野球をする漫画を大好きになって、うちの裏のあき地で野球の真似事をしています。
それでボール投げに親しんで、ボール投げも大分上手になりました。転がっていくボールを追いかけて走るので少しは運動になっているようです。
また、保育園の時からの週1のダンス教室もずっとやめたがっているのですが継続しています。体力がなかったり運動が苦手だったりすると、惨めな気持ちになったり、苦い思いをすることもあるし、なにより元気がなくなります。
なんにしても体力と元気は、なにをするにも重要です。
よく食べてよく体を動かしてよく寝てほしいですが、うーちゃんの場合はまずよく食べません。ちょっとしか食べません。ただ、寝つきはとてもよくなりました。夜9時半くらいに布団に入るとすぐ寝ます。朝は6時半に起きて僕を起こしてくれます。だからちょっとずつよくなってると思います。
●保育園のときよりずっとたくましくなっていました!
すべてのレースが終了した後、民謡流しがありました。4年生の太鼓クラブの子が太鼓を叩いて、笛や歌も演奏します。昨年から町の夏祭りが開催されていません。太鼓クラブの人たちも練習の発表の場がないのです。
父兄も一緒にグラウンドに降りて、民謡を踊ってくださいとアナウンスがありました。僕も昔は踊れたのですが、すっかり忘れてしまいました。でもせっかくの機会なので、グラウンドに降りて1年生の並びにつきました。
うーちゃんに「何位だった?」と聞きました。
「15位」
やっぱり、うーちゃんらしき子はうーちゃんで、本当に15位だったのです。見くびっていてゴメン!
うーちゃんは走るのが苦手だったと思っていましたが、たしかに僕と一緒に6km走などしていました。それに自転車の子と一緒に移動するためによく走り回っているのかもしれません。目立つほど足が速いわけではないのですが、遅くはない。
僕が小学生のときは短距離はクラスで相当下位の部類で、とても情けない思いをしていましたが、うーちゃんは大丈夫でした。保育園のときよりずっとたくましくなっていました。
民謡流しは、うーちゃんの踊りを見て真似てましたが、うーちゃんの踊りもけっこうデタラメだったので、先生の踊りを見て真似しようとしているうちに終わってしまいました。
【古泉智浩さん】
漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『
うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(@koizumi69)をチェック!