豊かな未来を実現させるため、今、多くの企業がSDGsに取り組んでいます。住宅業界のこうした活動は、地球の環境保全はもとより私たちの生活にも大きく関わってきます。編集部では、SDGsに取り組むハウスメーカーをピックアップ。取り組みの一部を紹介します。上の写真は、ハンドルに手が届きにくい、力が入りにくい人にもラクに使えるタッチレス水栓(LIXIL)。ユニバーサルデザインを意識しています。スムーズに作業ができて便利。
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LIXIL:環境保護から多様性の尊重まで幅広いテーマに取り組むパナソニック:宅配BOXで再配達を減らし、暮らしやすく、働きやすく!大和ハウス工業:女性の家事負担を軽減するために生まれたプラン大和ハウス工業:街を再び「耕す」ことで新たな魅力を創出LIXIL:環境保護から多様性の尊重まで幅広いテーマに取り組む
ユニバーサルデザインの製造にも力を注いで
「水の保全と環境保護」をはじめ、幅広い分野でSDGsに取り組むLIXIL。その取り組みのひとつ「多様性の尊重」の分野では、すべての人が豊かで快適な暮らしを送るためのユニバーサルデザインの製品開発があります。
2050年には5人に1人が60歳以上になり、その多くが高齢者だけの世帯になるという背景も踏まえ、年齢や国籍、障がいの有無や使う人の能力にかかわらず、「よい製品」を提供することで生活の質の向上に貢献。2030年までにすべての製品がユニバーサルデザインコンセプトに基づいたものとなることを目指し、「分かりやすい、使いやすい、安全が安心に、愛着がわく」の4つを軸において製品開発を進めています。
子どもでも軽い力で開け閉めできる玄関ドア。使いやすい引き戸であることも特徴。
座ったまま快適に作業ができる車椅子対応キッチン。
パナソニック:宅配BOXで再配達を減らし、暮らしやすく、働きやすく!
宅配ボックスの普及のため「宅配ボックス実証実験」を実施
パナソニックの取り組みのひとつに「宅配ボックス設置の普及」があります。その一環として福井県あわら市が進める「働く世帯応援プロジェクト」に参画し、共働き世帯を対象とした「宅配ボックス実証実験」を実施しました。
モニター106世帯に宅配ボックスを設置し、4か月間使用してもらい調査を行ったところ、再配達率が約49%から約8%にまで減少。結果、再配達のためのCO2排出量低減とともに、利用者にとって利便性が高まり、不在が多く受け取れないなどのストレスの改善にも。宅配ボックスの使用満足度については、98%の人が「満足している」と答えています。
4か月間の実証実験の結果
※国土交通省調査 宅配の再配達の削減に向けた受け取り方法の多様化の促進等に関する検討会報告書 2015年より算出
暮らしをサポートするだけでなく、配送の際のCO2も削減
自治体単位での実証実験はあわら市にとどまらず、京都では学生を対象に「京の配達を減らそう!プロジェクト!」を、東京都世田谷区では「子育て世帯の受け取りストレスを減らそう! プロジェクト」を実施しました。パナソニックが目指しているのは、人が生活するすべての建物に宅配ボックスを設置すること、普及への取り組みを続けることです。
宅配ボックスは受け取る人だけでなく、配達業者にも環境にもメリットが大きいことが分かりました。宅配ボックスが設置されることで、宅配業者の労働時間は月に約56時間削減され、さらにはトラックのCO2排出量が月に約116kg削減すると見られます。
実際に使った人から聞かれる多くの満足の声
実際に使用したモニターからは、「再配達が減れば宅配業者さんの負担も軽くなり、トラックが排出するCO2も削減できるんですね。宅配ボックスでちょっとだけ社会の役に立てている気分にもなれました」「子どもがひとりで留守番をしているときにも、宅配ボックスに入れてもらえるので安心です」「待たずにすむことで時間を有効に使えるようになりました」といった満足の声が多く聞かれました。
ちなみに、パナソニックは宅配ボックス「コンボ」シリーズの売り上げの一部を、一般社団法人東京都トラック協会へ寄付しています。
戸建住宅用宅配ボックス「コンボライト」。右のように大小のボックスを2段重ねて使用することも可能。
大和ハウス工業:女性の家事負担を軽減するために生まれたプラン
共働き世帯をサポートしてくれる、家事を家族でシェアする家
大和ハウス工業は共働き世帯のために、女性の家事負担を軽減する住宅を提案、社会での活躍をサポートしています。戸建住宅「家事シェアハウス」は、2016年、家事と仕事を両立する女性社員が「夫が協力的なのに負担が減らない」ことに疑問を持ち、夫や子どもたちがこれまで意識が低かった家事にも自然と参画することを目的に誕生しました。
動線や収納の工夫で、「自分のことは自分でする」を基本としつつ、洗濯や掃除などの家事をまるごと家族全員でシェアする「家事シェアハウス」。子どもにも助け合いの気持ちが生まれます。
「家事シェアハウス」のモデルプラン。帰宅してからリビングに入るまでに、着替えや片づけ、手洗いが自然な流れでできる動線を提案。
大和ハウス工業:街を再び「耕す」ことで新たな魅力を創出
Liveness Town(リブネスタウン)プロジェクトで持続可能な街を
1960年代の高度成長期に、当時の住宅不足に対応するため、大和ハウス工業は郊外型戸建住宅地「ネオポリス」を全国61か所に開発。「ネオポリス」は開発から50年以上が経過し、あき家問題や高齢化による地域コミュニティの希薄化など、現在さまざまな課題に直面しています。
今住んでいる人たちがいつまでも安心して住み続けられること、また、街の魅力が外の若い世代を「この街に住みたい」と引き寄せる、そんな未来を思いながら「ネオポリス」を「再耕」
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する「Livness Town(リブネスタウン)プロジェクトに取り組んでいます。
※大和ハウス工業の造語。「戦後の高度成長期、土地を切り拓き、街をつくり、暮らしを育んできた私たち。時代が大きく変わろうとしている今、もう一度街を耕し、お客様の暮らしを耕し、この国の新しい未来を耕す」という想いが込められている
横浜市の「上郷ネオポリス」。住民が運営に携わるコミュニティスペースの開設やイベントなどを企画し、街を盛り上げています。
イラスト/ナカオテッペイ ※情報は「住まいの設計2021年10月号」取材時のものです