長引くコロナ禍で、テレワークという働き方が、ごく当たり前になってきました。今よりもっと快適なテレワークスペースが欲しい!と思っている人は多いはず。そこで、現状のリビングダイニング(以下LD)で、理想的なテレワークスペースをつくる方法を紹介。教えてくれるのは、『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』の著者で、建築家のしかまのりこさん。今までに相談を受けた事例をもとに、間取り図面や3Dを使ってわかりやすく解説します。

リビングダイニングにつくった快適なテレワークスペース
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目次:

テレワークスペースをつくるポイントは、動線・空間分け・収納の3つCASE1.ダイニングテーブルを中心に置いた場合は、動線上の壁際に!CASE2.ダイニングテーブルを窓際に置くと、2か所つくることが可能CASE3.ダイニングテーブルを壁際つければ、L字型ワークスペースができる

テレワークスペースをつくるポイントは、動線・空間分け・収納の3つ

テレワークスペースなど、新たな機能をリビングに追加する場合、押さえるべきポイントは3つあります。それは、動線・空間分け・収納。

つまり、動線を意識して、機能ごとに空間分けをして、それぞれの空間に収納をつくることです。

では、どのようにポイントをおさえていくといいのか?実際の事例で解説してきます。

上の間取り図は3LDKマンションの15畳のLD。相談依頼者の家族構成は、共働きのご夫婦と小学校2年生の娘。

間取り図に青の矢印で表したものが、人が動く「動線」です。そして点線で分けているのが、リビングやダイニング空間などの「空間分け」です。

リビングには、大きめのファミリークローゼットがあり、またダイニングにはデッドスペースを生かしたダイニング収納も設置されています。

そのほかにも、チェストやTVボードなど、空間ごとに「収納」が設置されていることで、ものがほかの空間に散らかりにくく、片づけやすい部屋になっています。

この間取りの場合、空間分けをしたふたつの空間のうち、比較的スペースに余裕のあるダイニング空間に、テレワークスペースをつくるのがベスト。では、ダイニングテーブルの位置別に、3つのパターンを解説していきましょう。

CASE1.ダイニングテーブルを中心に置いた場合は、動線上の壁際に!

8畳のダイニングの真ん中にテーブルを配置してみる

空間分けしたダイニング空間の広さは、約8畳です。
この限られたダイニング空間の中にあらたにテレワークスペースをつくる場合、キーとなるのがダイニングテーブル。ダイニングテーブルは、その大きさから、ダイニング空間でもっとも場所をとるからです。

そのため、ダイニングテーブルの位置をはじめに決めてから、余った場所にテレワークスペースをつくると、無理のない空間設計ができます。

まず、ダイニングテーブルをダイニング空間の中心に置いてみましょう。
ダイニング空間の中心に、ダイニングテーブルを置いた場合、テーブルの周りに上図のような動線ができます。

ダイニングの動線の一部にテレワークスペースをつくる

その動線上にテレワークスペースをつくりました。

テレワークスペースには、必ずテレワーク専用の収納をつくる

そして、テレワークスペースには、上図のように、必ずテレワーク専用の収納をつくります。
そうすれば、ダイニングテーブルなどのそのほかの空間に、テレワーク関連のものが散らばらず、片づけやすい部屋になります。

またパソコンでの作業なら、テーブルの奥行きは45㎝ほどでも足りますが、テーブルライトや書類を置くなどの作業となると、テーブルの奥行きは50㎝以上必要になります。

テーブルの幅は、ひとりで使用するなら幅100㎝もあれば十分です。もし、ふたりで使用するなら、テーブルの幅は160~200㎝程度必要になります。

ふたりでテレワークできるように、幅200×奥行50㎝の大き目のテテーブルを置いた例

上図は、ふたりでテレワーク(またはリビング学習)できるように、幅200×奥行50㎝の大き目のテレワークテーブルを置いた様子です。

ダイニングにつくった、ふたりで使えるテレワークスペース

横幅が2mあるので、ゆったり。作業がはかどります。

キッチンから見た、ダイニングのテレワークスペース

キッチンから見るとこんな感じ。ダイニングへの動線はそのままに、快適なテレワークスペースが生まれました。

CASE2.ダイニングテーブルを窓際に置くと、2か所つくることが可能

窓際にダイニングテーブルを置いた場合は、ふたつの動線ができる

窓際にダイニングテーブルを置いた場合は、テーブルに平行に、壁側とソファ側に2本の動線ができます。

ダイニングにできたふたつの動線上に、テレワークスペースをつくる

上図は、この動線上にテレワークスペースをつくったケース。

機能的なテレワークスペースがふたつ生まれました。ダイニングチェアとテレワークチェアはそれぞれ置いていますが、兼用してもかまいません。

ダイニングチェアをテレワーク時に移動して使う

つまり、テレワークするときは、上図のようにテレワークチェアとして使います。

食事のときは、イスを戻す

そして、食事をするときは、上図のようにダイニングチェアとして使います。
そうすることで、ものが増えすぎず、また機能的で動きやすいテレワークスペースになります。

ダイニングにテレワークスペースがふたつあるのにスッキリ

余計なものがないスッキリしたテレワークスペースになります。

テレワーク用のテーブルの高さが、ソファの背の高さを越えないことがポイント

この配置で気をつけなくてはいけないことがひとつあります。

それは、ソファに沿ってテレワーク用のテーブルを配置する場合、テーブルの高さがソファの背の高さを越えないこと。ソファの背よりテーブルが高いと、テーブルに置いたものが、ソファへと転がってしまうからです。

通常のソファであれば心配はいりませんが、ローソファなどのタイプの場合は注意が必要です。

ダイニングチェアとの兼用で、広々とした印象のダイニング

それぞれが広々として、使いやすいテレワークスペースに。

テーブルの奥行きを50㎝とっておくと、リビング学習のスペースとしても使いやすい

テーブルの奥行きを50㎝とっておくと、リビング学習のスペースとしても使いやすくなります。

CASE3.ダイニングテーブルを壁際つければ、L字型ワークスペースができる

壁際にダイニングテーブルを置いた場合は、L字型の動線ができる

壁際にダイニングテーブルを置いた場合は、L字型の動線ができます。

動線に沿ってつくったL字型のテレワークスペース

この動線に沿って上図のように窓際に、L字型のテレワークスペースをつくることができます。

窓際にテレワークスペースをつくるメリットは、自然光を取り込めること

窓際にテレワークスペースをつくるメリットは、テーブル作業面に自然光を採り入れられる点です。

L字型のテレワークスペースの場合、コーナー部分に収納を置くとジャマにならない

専用の収納は、デスクワゴンを使うか、またはコーナー部分に置くと、足元のジャマになりません。

ダイニングとリビングの間にできたL字型のテレワークスペース

空間が分かれ、また動線がスッキリしているので、広くて使いやすいです。

窓からの自然光が心地よいテレワークスペースと、リビングダイニングの家具配置

窓からの自然光が、心地よい家具配置です。

動線・空間分け・収納の3つを念頭に置けば、今の間取りにも機能的で使いやすいテレワークスペースがつくれます。ぜひ参考にしてください。

●教えてくれた人/しかまのりこさん
COLLINO一級建築士事務所主宰。一級建築士、300軒以上のリビング・寝室・子ども部屋の模様替えを行い、模様替えのスペシャリストとしてTVや雑誌でも活躍。近著『狭い部屋でも快適に暮らすための家具配置のルール』(彩図社刊)では、「テレワークスペース」やリビングが片付かない「リビング崩壊」について詳しく解説している