ダイニングチェア、ベンチ、スツールなど、ダイニングで使うイスにはいくつかの種類があります。それぞれどんなメリット・デメリットがあるのか、自分の家に合ったイスはどのように選べばいいのか、家具工房「フリーハンドイマイ」の代表・今井大輔さんに詳しく教えていただきました。
すべての画像を見る(全6枚)きちんとした姿勢を重視するならダイニングチェア
食事のときは「ダイニングチェア」と呼ばれる背もたれやひじ掛けのあるイスに座って食事をするお宅が多いと思います。きちんとした姿勢で食事できる、という点がメリットです。
私が考える使いやすいダイニングチェアの条件は、以下の3つです。
- 座ってテーブルにひじを置いたとき、背筋が丸まらない程度の高さがあること
- 座面は水平で、ほどよいクッション性があること
- 適度にリクライニングできるよう、背もたれの角度は座面に対して95~100度くらい
また、基本的に長時間座ることを想定していないので、背もたれは頭や肩までカバーする高さは必要なく、肩甲骨の下あたりから腰にフィットするくらいの高さの背もたれがあれば十分と考えています。
掃除がしやすいよう、イスは軽い方がいい
工房にきてくれたお客様から、よく「イマイさんのつくったイスはとても軽いですね」と言われます。イスはなるべく最小限の部材でシンプルにつくりたい、という気持ちでつくっているからだと思います。
昔は、どっしりとした頑丈な材を使ったダイニングチェアも多く、座る際に両手で引かないと動かしにくいようなものも結構ありました。
でも、ダイニングは汚れやすい場所ですので、気軽に(できれば女性が片手で)持てるくらいの重量のほうが使い勝手がいいですよね。わが家ではテーブルの周りを掃除するときはイスをひっくり返してテーブルに載せるので、イスは軽いほうがいいという思いが強いのかもしれせん。
ひじ掛けのありなしは好みが分かれるところですが、最近はひじ掛けなしのものを選ばれる方が多い印象です。ひじ掛けがあるとイスを引く際にスペースが必要になることや、テーブル下に収めにくいといった理由のようです。
ベンチは家族が多いお宅に最適。動線をよく考慮して配置を
最近はベンチをダイニングチェアのように使う方も増えています。ベンチは基本的には背もたれがないので、前からも後ろからも、横からも座ることができます。イスを2脚を並べるより見た目もシンプルですし、家族が多いお宅などにも向いています。
以前わが家ではダイニングチェア2脚と、ベンチを組み合わせて使っていました。子どもたちが小さいうちは同じタイミングで食事をしたり、遊んだり、勉強したりするので、不便はありませんでした。ですが、だんだん大きくなるにつれて、どちらかベンチから離れたいときにいったん立ち上がらなければならないような場面が出てきてしまい、不便を感じるようになりました。
配置によってはそうした問題が起きてしまうので、ベンチを取り入れる際は、動線的なこともよく考えて配置するといいと思います。
スツールは簡単な食事をとるときやキッチンでの休憩に
もっとシンプルに、簡素なスツールでいいです、というお客様もいます。たしかに、簡単な食事をとるときなどは便利に使えます。来客時などに引っ張り出してきてちょっと座ってもらうときなどにも役立ちます。
どの方向からでも座れるようにシンメトリーな形になっていることが多く、円形のものをよく見かけます。座面はそれほど大きくなく、お尻を座面に載せるようなイメージです。
以前、もう少し座りやすいスツールができないかと思い、お尻をしっかり支えられる大きめの座面で、さらにフィットしやすいように四角い座面を緩やかにくぼませたスツールをつくったことがありました。でも、座面が大きいと転びやすくなり、また四角い座面だと座る方向が4方向に限られてしまい、かえってスツールとしては座りにくくなってしまいました。
座面を小さめにして、キノコのように中央がこんもりとふくらんだ形で、少し硬めのファブリックを張った座面のスツールもつくったことがあります。お尻の角度を変えやすく、ほどよくフィットするので、キッチンでちょっと休憩したいときなどにも役立ちます。
妻に聞くとキッチンでの長時間の単純作業(たとえば、モヤシのひげ根を取ったり、ギョーザを包んだり)をするときにスツールがあると便利、と言っていました。
きちんとした姿勢で食事をとることや掃除のしやすさを重視するなら軽量のダイニングチェア。家族が多く、フレキシブルに使いたいならベンチ。簡単な食事をとるときや、キッチンでの休憩などにはスツール。そんな具合に、暮らし方や使い方に合わせて使い分けるといいと思います。
●教えてくれた人/今井大輔さん
暮らしに寄り添うオーダーキッチンやオーダー家具を手掛ける家具工房「フリーハンドイマイ」代表。神奈川県高座郡に工房とショールームがある。