自宅で仕事をすることも多いカウンセラーの妻。夜勤のある仕事で日中に就寝することもある夫。A邸のリノベは、お互いが気をつかわずに過ごせる住まいづくりがテーマになりました。床をレンガタイルで仕上げた空間には、愛用の北欧家具がずらり。ふたりの時間もひとりで過ごす時間も快適に過ごせる工夫がこらされた新居を、さっそく見せてもらいましょう。
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リビングの延長に開放的な妻のワークスペースを配置を工夫して、寝室は夜勤明けの夫が日中にぐっすり眠れる空間にふたりで過ごすスペースも充実させて白を基調とした清潔感たっぷりの水回り間取り図(リノベーション前後)リビングの延長に開放的な妻のワークスペースを
きめ細やかな対応と集中力が必要とされる、カウンセラーの妻。明るく風通しのいい、外を眺められる場所で仕事をすることを希望し、リビングの延長にワークスペースを設けました。
床はレンガタイル仕上げ。マンションの11階ということを忘れ、一戸建てのような落ち着きを与えてくれます。
ワークスペースとリビングダイニングの既存の窓には障子を新設しました。障子紙を下部だけに貼ることで、視覚からバルコニーを消去。遠くの景色だけが目に入って、妻が仕事中に景色を眺めて気分転換できます。
仕事用の書類は、アンティークのキャビネットに納めています。リビングとひと続きのエリアですが、扉を閉めればすっきり。
仕事場のデスク背面には本棚を造作しました。最上段には神棚も違和感なく収まっています。本棚とテレビのある白い壁の部分は、寝室として使っている和室。まわりをぐるっと回遊できるユニークなつくりになっています。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
夫35歳 妻35歳
▼リノベを選んだ理由
新築マンションを購入して住んでいたが、ライフスタイルと合わず何かと住みにくさを感じていた。自分たちらしい空間を手に入れたいという思いが募り、中古マンションを購入してリノベすることを決断
▼住宅の面積
専有面積/76.26㎡
配置を工夫して、寝室は夜勤明けの夫が日中にぐっすり眠れる空間に
キューブのように白い壁の部分が、寝室として使っている和室。右手に玄関があり、LDKを経由してぐるっと回遊できます。
寝室を独立したつくりにしたのは、夜勤明けの夫が日中もぐっすり眠れるようにという配慮。妻が仕事中のことも多いため、妻の仕事場のあるLDKと寝室は壁で仕切りましたが、地窓を設けてゆるやかにつながる部分もつくっています。
夜勤のある夫が日中でもぐっすり眠れるように考え抜かれた、独立性の高い寝室。当初、Aさん夫妻はベッドを希望していたそうですが、設計を担当した若原一貴さんは、和室+布団のスタイルを提案。
「ベッドを置くと寝るためだけの部屋になってしまいますが、布団はしまえるので、部屋を多目的に使えます」(若原さん)
玄関を入ると、右手に寝室を囲むように設けた廊下が伸びています。外壁との間に空間をとり、出入り口をLDKから離れた場所に設けることで、日中でも暗く静かな睡眠環境を実現。夫の睡眠中、妻も気兼ねなく過ごせます。
ふたりで過ごすスペースも充実させて
ふたりで過ごすことが多いのは、こちらのダイニングキッチン。妻はパンを焼くこともあり、ゆとりのある広さを確保しました。
ガラス天板のダイニングテーブルと、フィリップ・スタルクのチェアは、以前から持っていたもの。「存在感の強い家具なので、設計上のポイントになりました」と設計の若原さん。
キッチンメーカーの「ヤジマ」に特注した端正な白いI型キッチン。食洗機や米びつ、ゴミ箱なども整然と収まっています。左の不要な小窓は扉を付けて隠し、右側の窓には障子を取り付けました。
玄関からLDKへつながる、ゆったりとした幅の廊下。夫はここでスノーボードのワックスがけをすることもあるとか。開口部には垂れ壁をつけて、窓を低く抑えることで空間に落ち着きをもたらしています。
白を基調とした清潔感たっぷりの水回り
内装を白で統一した清潔感のある洗面脱衣室。床は水に強く手入れが簡単な塩ビタイルに。洗濯が大好きな妻は、ここでお茶を飲みながら洗濯機が止まるのを待つこともあるとか。
洗面台まわりの壁面は七色にきらめくモザイクタイルで仕上げました。コンパクトな洗面ボウルはT-formのもの。
トイレも清潔感を大事して内装を白で統一。手洗い器や収納も備えた機能的な空間になりました。
夫婦が別々に過ごす時間も、一緒に過ごす時間もしっかりと考慮され、快適な住まいへと生まれ変わったA邸。白い特注キッチンや障子を用いた開口部のおさまりなどの端正なデザインも、A邸をさらに魅力あるものにしています。
間取り図(リノベーション前後)
リノベーション前
リノベーション後
設計/若原アトリエ
代表の若原一貴さんは1971年東京生まれ。'94年日本大学芸術学部卒業後、横河設計工房入社。2000年若原アトリエを設立。光がつくる「居場所」、素材がもたらす「居心地」、美しい空間と豊かな暮らしを目指している
撮影/山田耕司 ※情報は「リライフプラスvol.21」取材時のものです