室内のことはじっくりと検討する割に、家の外に関しては、ついおろそかに…。新居のプランニングの過程ではよくある話です。でも、ちょっとまって!敷地によっては、室内と家の外のつながりをまず検討し、その結果から、家の間取りを導き出すのが正解ということもあるのです。家は、内も外も両方大事!今回は、建主が快適な時間を楽しむことができる庭とテラスに注目してみました。なぜ、「家の外も大事」なのか納得できるはず。
すべての画像を見る(全9枚)抜け道の奧に広がる南の庭でリラックス
まるで里山を思わせる緑いっぱいのスペース(冒頭の写真)。ジューンベリーなど様々な種類を植樹がされています。
こちらは、H邸の南側にある庭。建物は、敷地の左右に建つ親世帯と子世帯の家を、ブリッジでつなげたように配置されています。
駐車場や玄関のある北側と建物を挟んだ南側に、趣向の異なる2つの庭が広がります。日当たりがよく開放的な南の庭は、こんもりした芝生の丘。
既存の地形を生かしたかのように見えますが、実はこれ、家を建てる際の基礎工事で掘った土を活用してつくった築山です。2棟を正対させず、建物の高さや向きを変えるために施した結果の産物がこの築山なのです。
築山のおかげで、子世帯の建物が半階ほど上がり、2棟を結ぶブリッジの下に南北を行き来する小路が誕生。起伏に富んだエクステリアになり、Hさんはひなたぼっこなどを楽しんでいます。一方、北側の庭は、日陰を楽しむ庭として活用しているそう。
道路から見た北の庭。右手に親世帯、左手に子世帯の玄関があり、2棟をつなぐブリッジの下が通り抜けできる小路。
親世帯の屋上テラスからブリッジを眺めたところ。ブリッジの内部は子世帯のサンルームです。右手前の木はイロハモミジ。
しっとりした半日陰の北の庭と陽光あふれる南の庭をつなぐ抜け道は、風の通り道でもあります。飛び石階段は大谷石。左の樹木はソヨゴ。
<神奈川県 Hさんの家>設計/acaa 撮影/伊藤美香子
天井と床で室内とつながる半戸外の都市型階上ガーデン
敷地は42坪と都市型住居としては十分な広さがあり、三方が道路に接し、うち西側の道路は駅に通じるという、好立地に家を建てたAさん夫妻。住居はスキップフロア構成で、1階は寝室と個室、半階上がって浴室などの水回り、2階にDK、リビングはさらに半階上がった位置に効率よく配置されています。
印象的なのは、2階ダイニングの南側にある室内と連続した屋根が掛かる半戸外のテラス。ロシアンバーチの天井と床のタイルが、室内から窓外へシームレスに続くので、LDKはテラスと一体になり、ダイナミックな広がりを見せます。ちなみに、半戸外のテラスの床タイルは、建築家・妹島和世さんが設計した建築の壁で使われたのと同じもの。
「遊び盛りの子どもがいますが、ここなら交通事故の心配がないし、半戸外の心地よさは格別です」と、夫もお気に入りの場所に。
三方向で接道する恵まれた立地で、敷地の北側は駐車スペースに活用。植栽のグリーンが彩りを添えます。
戸外に屋根を掛けることで室内との一体感が高まり、実際の大きさ以上の広がりが感じられるLDK。ダイニングの床タイルは窓外のテラスまで延長され、窓を開ければ内外の境界が曖昧になり、外へと緩やかにつながります。
テラスの奥は隣家の庭を借景に。
西側の庭には、シンボルツリーのアオダモをアプローチのアクセントにしています。
<埼玉県 Aさんの家>設計/GEN INOUE 撮影/Takuya Yamauchi