夫婦ともに団地での暮らしに憧れがあり、運よく希望の団地物件を購入することができたMさん夫妻。インナーテラスを介して外からの光がたっぷり届くリビングダイニングは、天井高が3mもある広々とした空間です。団地の個性を生かしながら、回遊性の高い間取りを実現し、レトロモダンな雰囲気にリノベーションしたMさん宅をさっそく見せていただきましょう。
すべての画像を見る(全16枚)室内に60㎝の高低差がある個性的な物件をリノベ
玄関ドアを入って室内へと進んでいくと、60㎝ほどの段差を下りるステップが現れます。団地の1階に位置するM邸は、室内に高低差があるユニークな住まいです。
ステップを下りるとLDKが広がり、リノベで天井板を外したことで3mもの天井高を満喫できる空間になりました。
ステップを下りてすぐのスペースは、床にタイルカーペットを採用したリビング。風通しを考慮して、奥の個室はチェッカーガラスの室内窓で仕切るだけにしています。
リビングの壁の1面には、柱の間のくぼみを利用してCDラックとオーディオボードを造作。建具などと同じグレーの塗装で仕上げて統一感を出しました。
玄関からの冷気や視線をカットできるように、ステップのあるLDKの出入り口部分にはカーテンを設置。ソファ背面側の壁はマグネット塗装で仕上げました。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
夫38歳 妻43歳 長男5歳
▼リノベを選んだ理由
それまでは賃貸マンションに住んでいたが、子どもの誕生とともに自分たち仕様の家が欲しいと思うように。夫婦ともに団地に思い入れがあり、団地物件をリサーチする過程で、好みにぴったりだったリノベーション会社・リボーンキューブの施工事例を発見。団地物件の購入が決まると同時に同社にリノベを依頼した
▼住宅の面積やコスト
専有面積/83.82㎡ 物件価格/1800万円 工事費/1200万円(税、設計料込み)
ダイニングキッチンは開放感たっぷりのレトロモダンな空間
床を大判タイルで仕上げたダイニングキッチン。隣接するインナーテラスはチェッカーガラスの3枚引き戸で閉め切ることができ、採光しながらテラス側から伝わる冬の冷気を遮断できます。右手の黒い引き戸は収納スペース。
「旅館の広縁みたいなスペースが欲しかった」という夫の希望で設けたインナーテラス。夫がのんびりくつろいだり、妻が仕事をしたり、多目的に使っています。
仕切りの少ない開放的な空間にするため、キッチンは壁付けに。クールな業務用キッチンを選びましたが、レトロな食器棚や壁&床のタイルでぬくもりも感じられる空間に仕上がっています。
ダイニング横の収納は、ぴったりサイズのシェルフを使って整理整頓。「大容量なので収納はここだけで十分。逆にここに入らないほどモノを増やさないようにしています」と夫。
素材にこだわりながらシンプルに仕上げた水回り
高低差のあるM邸の「高い場所」にある洗面室。奥の引き戸はトイレで、右手には浴室がつながります。
壁付けにした実験用シンク、木製ハンドルの水栓、モザイクタイルなどを採用して、シンプルな中にも個性が感じられるスペースに。
ユニットバス不可という団地の規約により、浴室は在来工法で仕上げました。タイルを馬目地貼りにした壁やホーローの浴槽などを組み合わせて、レトロモダンなテイストに。
塗装仕上げの壁はほぼ白を選んだM邸ですが、トイレだけは紺色に。ダークトーンでまとめることで、落ち着いてこもれる雰囲気を演出しています。
玄関横の子ども部屋は、現在は家族3人の寝室として使っています。いずれ夫婦の寝室にする可能性も考えて、内装はシンプルに。
床下と壁に断熱材を入れたり、外壁側の壁に特殊塗装を施したりして、1階の物件の悩みどころである結露&カビ対策も万全におこなったM邸。
室内環境が高まり、間取りの工夫や高低差の活用で開放感も満点。理想だった団地での暮らしを満喫しています。
間取り(リノベーション前後)
リノベーション前
リノベーション後
設計・施工/リボーンキューブ
京都を中心にリノベーションの企画・設計・施工を手掛け、代表の荒井弘さんがデザインを担当。不動産の売買・仲介もしており、中古物件探しからプランニング、住宅ローンの斡旋、アフターサービスまでトータルにサポートする。 IKEA キッチンの正規取扱店でもある
撮影/飯貝拓司 ※情報は「リライフプラスvol.25」取材時のものです