「家族団らんしやすい」「どこにいても家族の気配を感じられる」「明るく開放的」…。これらは子育て世代が家を建てる際、理想とする代表的なキーワードとされています。しかし、実際に長く住んでみると、こうした理想と言われていたことがストレスになることも。約11年前に家を新築した日刊すまいライターも、そんなひとり。家じゅうどこにいても家族とつながれる開放的な家にしたい!とオープンな間取りの住まいを実現しました。ですが、夫や成長した子どもたちの行動で、今やその開放感がちょっと苦痛に感じるといいます。
すべての画像を見る(全6枚)オープンすぎるキッチンがストレスに
少しでもリビングが広くなるようにと設置したオープンキッチンですが、実際使ってみると、オープンすぎることをストレスに感じてしまいます。
新築したばかりの頃は、オープンキッチンだから料理中も子どもたちが遊んでいる姿が良く見えて安心、と思い込んでいました。ですが、よほど大きな家でない限り、家じゅうどこにいても見渡せるかも…、と気付いてしまったんです。
マメに片付けをしてキレイを保てる家庭なら良いのでしょうが、そうでない家庭の場合はどうしても散らかってしまうので、次第にオープンなことをストレスに感じるようになってしまいました。
料理の音やニオイもリビングに伝わってしまうので、テレビの音がよく聞こえない!とか、揚げ物の匂いがリビングにこもる!といった苦情が家族から寄せられることもあります。
1階と2階がつながりすぎる…リビング階段のリスク
「リビング階段は絶対条件!」と思っていた11年前の筆者。「子どもたちの様子がよく見えるように」と、絶対にリビング階段は外せない条件でした。
リビング階段はたしかに子どもたちの様子がよく見えますが、1階と2階の空間をつなげると、余計なものまでつながってしまうことに気付いたんです。
昔は気にならなかったことなのに、今ではちょっと苦痛に感じてしまいます。
1階の音が2階に聞こえてきてストレスを感じる
リビング階段のせいで、1階の音が2階に聞こえきてストレスを感じることがあります。たとえばテレビの音。夫がよく夜遅くまでテレビを見ているのですが、2階の寝室までテレビの音が聞こえてきます。
バラエティー番組を見ているのか、夫の大きな笑い声が聞こえてくると、「寝てるのに!」と、さすがにイライラしてしまいます。
冬は2階の冷気が1階に下りてきて寒い
とくに冬になると階段を伝って2階の冷気が1階に下りてきます。階段が直接リビングに向いているので余計に寒さを感じるんです。
2階の暖房温度をもっと上げれば良いのでしょうが、人がいることの少ない2階の温度を上げるのは、どうしても「もったいない」と感じてしまうのです。
快適さを求めるべきか?電気代を節約するべきか?考えた結果、子どもたちの成長とともにお金がかかりだしたわが家では、迷わず「節約」を選んでしまいます。
子どもたちの気配や足音がかえってストレス
階段の上り下りをするときに、子どもたちの気配を感じられるようにと「リビング階段」にしたはずなんですが、今ではその気配がかえってストレスに感じるようになってきました。
家を建てたばかりの頃は「子どもたちが思春期になったとき、家族と顔を合わせないまま2階に行かないように」などとイメージしていました。でも、思春期になるとちょっとした悩みごとがあったとしても、そもそも親に言わないのであまりメリットを感じません。
子どもが自室にこもるようになると、飲み物を取りにきたりトイレに行くために何度も階段上り下りする音や気配がいちいち気になるようになってきました。
小さくてかわいかった子どもたちの足音が、今のように「ドスドス」に変わってしまうと、音の感じ方も変わってしまうんでしょうね。廊下階段にしておけば、こうしたストレスとは無縁だったと思うと、ちょっと後悔してしまいます。
窓はたくさんあればいい、とも限らない
わが家にはすべての壁に窓があるのですが、窓を付けすぎたかも、と後悔することがよくあります。
訪問営業が来たとき居留守を使いにくい!?
窓をたくさん付けてしまったがために、外からの視線を感じてしまって、落ち着かないなと思うことがよくあります。また、窓が多いと、外から見たときに人影が映ってしまうんです。
しつこい訪問営業が来たときなどは居留守を使いたいのですが、外から見たときに窓からシルエットが見えてしまいます。そのため、チャイムが鳴ると「動かないで!」と子どもたちに指示を出すこともあり、複雑な気持ちです。
窓が多いと伝わる冷気の量も増える
冬の寒い時期になると窓から冷気が伝わってきます。窓が多ければそのぶん冷気が伝わりやすくなります。
以前住んでいたアパートは窓が少なく、日中でも暗い部屋に不満を感じていたので、戸建てに住んだら窓がたくさん欲しい!と思っていたのです。
でも、窓が多いと冬は寒いので、日中でもいくつかの窓はカーテンを閉めて冷気を遮断するはめに…。本末転倒とはこのことかも、と感じてしまいます。
「ほどよく開いてほどよく隠す」が理想の形だったのかも
家の中をオープンにしすぎたせいで、子どもたちが大きくなるにつれて「こんなはずでは…」と後悔する場面が増えてきました。「ほどよく開いてほどよく隠す」が理想の形だったのかもしれません。
ですが、同時に子どもたちが家にいる時間が少なくなってきたおかげで、夫婦でゆったりと過ごせる時間が増えてきました。こうして子離れが進んでいくのだな、と感じています。
中学1年生の娘は「結婚しないでずっとこの家にいる」と、今から子ども部屋おばさんを宣言中。どうやらこの家が大好きみたいです。この先どうなることやら、ですが、そんな子どもたちの成長を楽しめるのも、この家があってこそだと感じています。