シナ合板は、比較的安価であるにも関わらず、多様な場所に使えて空間が品よくまとまる素材のひとつ。東京・東村山市に暮らす建築家・飯塚啓吾さんも、自宅の様々な場所にシナ合板を取り入れ、とても満足しているそうです。シナ合板を住まいにうまく取り入れるコツや注意すべきポイントについて詳しく教えてもらいました。
すべての画像を見る(全5枚)シナ合板は建築家も好んで使う材料のひとつ
詳しいことは知らなくても「合板」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思います。代表的なのものとして、今回ご紹介するシナ合板とラワン合板が挙げられます。
シナ合板とはシナノキを薄く切り出して表面に貼った木質ボードのことです。コストが安く価格や品質が安定しているので、おもに家具や内装材に使われるケースが多く、建築家も好んで使う材料のひとつになります。
芯材は積層材のため、無垢材に比べて材料が反ったり収縮したりすることも少ないです。また、赤みがかった色のラワン合板に対して、シナ合板は白色の木目で空間にやわらかい印象を与えてくれます。
シナ合板は家具や仕上げなど、様々な場所に使える
わが家では多機能なダイニングテーブル、吊り戸棚、天井にシナ合板を使っています。具体的にご説明します。
多機能なダイニングテーブル
わが家ではキッチンカウンター兼食器棚兼ダイニングテーブルの3つの役割を兼ねる大型家具を、シナ合板を使って制作しました。一枚板のシナ合板は優しい印象でありながら、インテリアの主役になる存在感があります。芯材は積層材なので反りなどの心配が少ないのも魅力のひとつです。
吊り戸棚
小さい住宅で造り付けの家具をたくさんつくってしまうと、生活スタイルが変化したときに対応が難しく、利便性が下がってしまいます。また、床に固定する形の家具をつくってしまうと、使える空間の面積が減ってしまうので、小さい住宅の場合はあまり効果的ではありません。
そこで、わが家では吊り戸棚を造り付けています。玄関上とキッチンの上に設置しているシナ合板の吊り戸棚は、室内の木部と白色の壁のちょうど中間の色調で、色彩のバランスを調和する存在としても役立っています。
引き違いの扉には穴をあけてもらい、引き手に金物を使わないスタイルにしました。シナ合板の持つやわらかい雰囲気を、最小限のコストで最大限引き出すことができたと思います。
天井
2階寝室の勾配天井にシナ合板を貼っています。わが家は基本的には1階も2階もワンルームなので、天井の仕上げはインテリアの面でも非常に重要になってきます。
白い壁と連続させて白い天井にしてしまうと少し寒々しい空間になるのでは、と考えて2階の天井を全面シナ合板で仕上げることに。その結果、柔らかい色彩や木のやさしい質感が空間を包み込むような印象となりました。天井全体に使っても嫌味がなく、非常に満足しています
シナ合板を使うときの注意点
シナ合板は品質も色味も比較的安定した材料です。ただし、使う部位によってはウレタンなどに代表される樹脂系の塗料で保護したほうが耐久性が増し、長く使うことができます。手に触れない天井などは浸透系の塗料(オイル系や自然材料をベースとした塗料など)を使うと色の変化が起こりにくくなっていきます。
ただ、木材であることに変わりありませんので、当然ながら経年変化は起こります。ですので、そうした変化も楽しむという前提で取り入れると良いと思います。
●教えてくれた人/飯塚啓吾さん
東京・東村山市で生まれ育った建築家。設計事務所に勤務し、集合住宅やマンション一リノベーションの設計を手掛ける。また、「ムライエ」名義で個人で小さい住宅や店舗のデザインも行う。専門学校の非常勤講師も務める。2018年、東京・東村山市に自宅を新築し、妻と2人の子どもたちと暮らしている
撮影/松崎直人(上から3点目以外)