太陽からの明るい光、気持ちの良い風…戸外と室内をつなぐ窓。家の居心地よさを決めるのに、窓は大きな役割を果たします。家を建てる、リフォームするという人は、窓についてもっと考えてみましょう。例えば、住宅密集地で思うような採光が望めないという敷地でも、窓の形状やつける位置を工夫すれば、快適な採光や通風をかなえることもあるのです。ここでは、デザイン、開閉方法、取り付け位置などといった観点から、様々なバリエーションの窓を紹介。あわせて、断熱性や防災性についても解説します。
すべての画像を見る(全20枚)採光・換気・防犯性。窓に求めるものは?
建築基準法で、「居室の床面積の7分の1以上、採光に有効な開口部を確保しなくてはならない」と定められているように、快適な暮らしのためにも窓は不可欠です。
もし日照が今ひとつの敷地の場合は、天窓や高窓の設置が有効で、スクリーンをつければ直射日光の強さも調節できます。
また防犯性を優先したい場合は、侵入できず、室内が丸見えにならないアクセント窓(ミニサイズやスリムサイズの窓)を配置する方法がおすすめ。
窓の開閉方法や形状は多彩で、なかには、排煙用など換気性を重視したものもあります。目的を考えて適材適所の窓を選びましょう。
開閉方式と形状で選ぶ窓のバリエーション
光を採り入れるのはもちろん、換気に特化したものやデザイン性を高めるものまで、様々な窓があります(※文中の「障子」は窓の可動部を指します)。
引き違い窓
左右に開閉する最もポピュラーな窓。障子の開け方で、通風の加減を調節できます。
フィックス窓
窓が開かない、別名はめ殺し窓。換気を必要とせず、採光や眺望が欲しい場所に最適。
片引き窓
片方がフィックス窓で、もう片方が開閉する窓。フィックス窓を左右どちらにつけるかを選べます。
両袖片引き窓
真ん中がフィックス窓で、両側が開閉する窓。
片上げ下げ窓
上下2枚の障子で構成され、上は固定、下だけを上げ下げするタイプ。
すべり出し窓
左右のアームに支えられた障子が、枠に沿って外側に開閉。清掃時や換気時に便利。
ソファ背面の壁にある6カ所の窓のうち、上下左右の4カ所がすべり出し窓です。
縦すべり出し窓
上下のアームに支えられた障子が、枠に沿って外側に開閉。洋風住宅への採用が多い窓です。
内倒し窓
障子を室内側に倒して開く窓。大きく開閉しないので、窓からの落下防止に効果的。
外倒し窓
障子を室外側に倒して開く窓。排煙用に高所へ設置することが多く、リモコンで開閉します。
出窓
室内からの眺望と採光性に優れた窓。室内スペースを広く感じさせる効果も。
天窓
屋根につけ、光をたっぷり採り込める窓。開閉できるタイプとフィックスタイプがあります。
全開放引き込み窓
全開にすると障子がすべて袖壁の外側に引き込まれ、大きな開放感が得られます。
折り畳み窓
障子を折りたたんで開閉できる全開放型の窓。室内・屋外をつないで一体感をつくれます。
アクセント窓
住宅の内観・外観を豊かにデザインできる小窓。防犯や防視にも効果的。細長いタイプは玄関や廊下などの狭い場所にも便利。
正方形、丸、ひし形など様々な小窓も。
小さな丸窓をリズムよく並べてインテリアと外観のアクセントに。
機能性ガラスでより快適に!
大きく開放的な窓は気持ちがいいものですが、そのぶん、熱の出入りも多くなります。冷暖房効率を高めるためにも、窓をはじめとした開口部は、断熱性能にも配慮したいところ。そこで注目したいのが、複層ガラスなどの機能性ガラスです。
Low- E 複層ガラス(遮熱)
例えば、遮熱タイプの「Low-E 複層ガラス」。室外側ガラスをLow-E 金属膜でコーティングすることで冷暖房効果が向上し、節電効果を発揮します(寒冷地用の断熱タイプも)。
防災安全複層ガラス
「防災安全複層ガラス」は、ガラスの間に強く柔軟性に優れた中間膜を挟んで加熱・圧着加工した合わせガラスを用いたもの。このほか、防音を目的とした複層ガラスなどもあります。
空が見える窓。心地よく風が抜ける窓。小さな窓からこぼれる木漏れ日のような光…。窓を工夫すれば生活シーンはもっと豊かなものに。断熱などの機能性も考慮しながら窓を計画して、快適な暮らしを手に入れましょう。
●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する
画像提供/YKK AP ※一番上の写真:設計/ディンプル建築設計事務所 撮影/川辺明伸