銀行、JA、ローン専門会社…。ひと口に住宅ローンといっても、借入先は多種多様。何をどう選んでいいか迷ってしまうほどです。できるだけ賢くおトクに利用するためにも、どんなものがあるのか、それぞれの特徴をきちんと押さえておきましょう。

目次:

【民間融資】人に対して融資を実行。勤続年数などが審査対象に【フラット35】比較的低金利の長期固定。誰でも利用しやすいのも利点【公的融資】低金利の「財形住宅融資」は会社員ならぜひ活用を

【民間融資】人に対して融資を実行。勤続年数などが審査対象に

住宅ローンのイメージ
すべての画像を見る(全3枚)

銀行などの民間融資は、いわば人に対して行う融資で、安定した職業(勤続3年以上が目安)や収入、借金の有無などの審査が行われます。借金に関しては、クレジットカードの借入限度額まで負債と見なされることを知っておきましょう。

住宅ローンは、店頭金利ではなく、実際には金利優遇キャンペーンの利用が多い模様。金利優遇の条件は、給与振り込みや光熱費引き落としの口座開設などが必須です。

金利優遇商品は、優遇幅が大きい代わりに比較的短期間のローン(固定金利選択型)と、優遇幅は小さいものの長期間借りられるローン(固定金利型)があります。借入期間中に貯蓄ができて繰り上げ返済に回せる人は前者、家計にそれほど余裕のない人は後者を選ぶといいでしょう。

融資先選びはこんなところもポイントに!

Point 1:金利だけでなく保証料などにも注目を

保証料や事務手数料も要チェック。保証料は借入金3000万円・35年返済で60万円前後。金利はやや高くても保証料不要の銀行もあり、比較が必要です。事務手数料も金額に差があるのでよく調べましょう。

Point 2:ネット銀行だと比較的低金利!

ネット銀行は実店舗がないぶん経費がかからず、金利が低めで利用条件も割に緩やか。住信SBI ネット銀行の場合、事務手数料は高めですが、それを差し引いても変動金利0.44%はおトク(2020年10月現在)。

Point 3:繰り上げ返済の条件も押さえておこう!

繰り上げ返済は、返済できる最低額や手数料をチェック。「フラット35」は最低額100万円で手数料なし。銀行の場合、最低額は様々で、手数料はインターネットからだと無料に。

Point 4:ローンの見積もりは複数依頼しよう

住宅ローンの見積もりは、何も1社だけに絞る必要はなく、複数依頼して比較を。審査には約1 か月など時間がかかるので、なるべく早く、金利の低そうな複数の銀行にアタックしましょう。

【フラット35】比較的低金利の長期固定。誰でも利用しやすいのも利点

住宅ローンのイメージ

「フラット35」は住宅金融支援機構と民間金融機関の提携ローン。機構が債権を買い取って証券化するシステムを取り、民間が長期固定金利の商品を出すことを支援しています。

このローンは「住宅」に対して行う融資といわれ、収入が少ない人でも要件を満たせば利用できるのが魅力。また比較的低金利で最長35年の固定金利を組めるのも利点です。2020年10月現在の金利は年1.30%(返済期間21年以上35年以下)。

融資を受けるためには、耐久性など一定基準をクリアすることが必要に。そのため、住宅の品質を確保できるのもメリットです。

融資に関する概要

  • 融資額 建築費・購入費以内(100万円以上8000万円以下)。融資額が建築費・購入費の9割を超える場合は、金利が高く設定されます。
  • 利用できる人
    総返済負担額の基準が年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下の人。収入合算可(申込時年齢70歳未満)
  • 対象となる住宅
    ①延床面積70㎡以上(敷地面積不問)
    ②一定の技術基準に適合している住宅
    ③新築の場合、申し込み時において竣工から2年以内で未入居の家
  • 返済期間
    15年~35年(申込時60歳以上の場合は10年~)※返済期間20年以内の場合は金利が0.09%程度低くなります(2020年10月現在)。
  • 融資金利
    全期間固定金利(金利は融資機関で多少異なる)
  • 担保
    融資対象となる住宅およびその土地に、住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定
  • 保証料
    不要
  • 繰り上げ返済
    インターネットサービス利用の場合は10万円以上、窓口利用の場合は100万円以上受け付け(手数料不要)
  • 申し込み窓口
    銀行・信用金庫など民間金融機関

さらに有利なフラット35Sも注目

フラット35よりも高い技術基準を満たした住宅に対して、借入金利を一定期間引き下げる制度が「フラット35S」。フラット35の記述基準に加えて、省エネルギー性、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性について設けられた基準のうち、1 つ以上を満たすことが条件となります。

2020年10月現在の金利引き下げ幅は、フラット35の借り入れ金利から年-0.25%です(2021年3月31日までの申込受付分に適用)。

プランが2タイプあり、金利A プランは金利B プランに比べて基準が高く(例えばA プランは耐震等級3、B プランは耐震等級2以上など)、長期間低金利が適用されます。

  • フラット35S(金利Aプラン)…当初10年間-0.25%金利引き下げ(フラット35比)
  • フラット35S(金利Bプラン)…当初5年間-0.25%金利引き下げ(フラット35比)

【公的融資】低金利の「財形住宅融資」は会社員ならぜひ活用を

住宅ローンのイメージ

公的融資には「財形住宅融資」と「自治体融資」があります。財形は会社員の特権で、会社に財形貯蓄制度があるならぜひ利用を。

魅力はその低金利。5年ごとに見直される変動金利で、年1.13%など(2020年10月現在)。財形貯蓄を1年以上続けていて貯蓄残高が50万円以上あれば、残高の10倍までの金額の融資を受けられ、最高4000万円と大型融資が実現可能(住宅取得価額の90%が限度)。

つまり、天引き貯蓄で頭金を400万円貯めれば、4000万円の融資が受けられます。

財形住宅融資のポイント

  • 金利…当初5年間1.13%(2020年10月適用分)
  • 返済期間…最長35年(中古住宅購入の場合は物件により25年または35年)
  • 融資の上限額…4000万円(財形貯蓄残高の10倍まで。住宅取得価額の90%が限度)

一方で、自治体融資は直接融資ではなく、民間住宅ローンの利子補給の形で行う場合が多いです。例えば埼玉県は子育て世代の住宅、親子の同居・近居用住宅の建築・購入に対して、県と提携している民間金融機関が、基準金利より低い金利で融資を行っています。

そのほか、エネルギー関連機器やエコ設備の導入に関しては、国や地方自治体からの補助金制度もあります。

住宅ローン選びは、普段からネットなどをよく見て、おトクな商品情報を得ることが肝心。金利の数字だけでなく利用条件も熟読して、比較検討してみてください。

※記載の内容はすべて執筆時点での情報です

●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する
写真/PIXTA