ABC / PIXTA(ピクスタ)新居を建てる土地を手に入れて、いよいよ家づくりスタート!どんな家を建てようかな?と、夢が膨らんでいるところに立ちはだかるのが「法規制」の壁。そう、自分の土地だからといって、好きなように家は建てられないのです。家づくりを考えるときに、いちばん最初に知っておきたい法規制のひとつ、「建ぺい率」と「容積率」について、詳しく解説していきます。

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目次:

土地は用途地域に分類される「建ぺい率」で1階部分の床面積が決まる延べ床面積の大きさは「容積率」で決まる

土地は用途地域に分類される

せっかく手に入れた土地だから、目いっぱい使ってできるだけ広い建物を建てたいところですが、残念ながらそれは無理。市街化区域(※)にある土地は、環境保全や防災の観点から12の「用途地域」に分類され、建てられる建物の種類や大きさが設定されています。

つまり、自分の土地がどの用途地域に分類されているかによって、建物の大きさの上限が決まってくるのです。この大きさを決めるのが、「建ぺい率」と「容積率」です。
※市街化区域:都市計画法で指定された、都市計画区域のひとつ。

用途地域は、年月が経つと、環境整備の観点から見直し・変更されることがあります。例えば準工業地域から住居系地域に変わったケースも少なくないので、家づくりを始める前に、今一度確認してみましょう。自分の土地がどの用途地域にあてはまるのかは、各地方自治体の窓口で調べられます。

用途地域の種類と目的

用途地域は、大きく分けて「住居系」「商業系」「工業系」の3つがあり、さらに細かく分類されています。それぞれの地域と特徴を見ていきましょう。

<住居系> ・第1種低層住居専用地域:低層住宅のための地域で、住宅以外に小規模な事務所兼用住宅や50㎡以下の店舗、学校の建築が可能。

・第2種低層住居専用地域:コンビニや喫茶店など150㎡以下の店舗の立地を認める低層住宅の専用地域。

・第1種中高層住居専用地域:マンションなど中高層住宅の良好な環境を守るための専用地域。

・第2種中高層住居専用地域:おもに中高層の住居のほか、病院、大学、1500㎡までの一定の店舗が建てられる。

・第1種住居地域:住居の環境を守るための地域で、3000㎡までの店舗、事務所、ホテルは建てられる。

・第2種住居地域:住居と商業施設が共存しながら、住居の環境を守るための地域。

・準住居地域:自動車関連施設などと住宅が調和して立地する地域。

<商業系> ・近隣商業地域:住居や店舗、事務所のほか、小規模なら工場建設も可能。

・商業地域:駅前の中心街のように、店舗や事務所などの利便の増進を図る地域。劇場や映画館も建築可能。

<工業系> ・準工業地域:環境に悪化をもたらす恐れのない工業の利便増進を図る地域。

・工業地域:工場の利便増進を図る地域。住宅や店舗は建築可能だが、病院、学校、ホテルなど人が多く集まる建物は建築不可。

・工業専用地域:工場の利便増進を図る地域。住宅の建築は不可。

※このほか用途地の指定のない区域もあり、建ぺい率と容積率は特定行政庁(市町村長、または都道府県知事)が定める。

「建ぺい率」で1階部分の床面積が決まる

建ぺい率

建ぺい率とは、敷地に対してどれくらいの比率で建物が建てられるかを示したもので、建築面積を敷地面積で割ったもの。一般に用途地域が低層・中高層の住宅系の土地では、環境を最優先して30~60%と低く定められ、商業・工業系の土地では、土地の有効活用を目的に60~80%と高めに設定されています。

さらに、建ぺい率を守ったとしても、隣地境界線ギリギリに建てるのは違反。隣地境界線から50㎝以上離して建てることが法規で定められています。

延べ床面積の大きさは「容積率」で決まる

容積率

一方、容積率は敷地面積に対する延床面積の割合。延床面積とは各階の床面積を合計したものになります。

例えば、

・敷地:100㎡
・建ぺい率:50%
・容積率:150%の場合。

・建築面積は100㎡×0.5=50㎡
・延床面積は100㎡×1.5=150㎡が上限。

3階建ての建物であれば、各階50㎡ずつの床面積の家が建てられます。

用途地域ごとの建ぺい率と容積率

それぞれの地域ごとに定められた建ぺい率と容積率は以下の通り。
<住居系>

用途地域 建ぺい率 容積率
第1種低層住居専用地域 第2種低層住居専用地域 30・40・50・60% 50・60・80・100・150・200%
第1種中高層住居専用地域 第2種中高層住居専用地域 30・40・50・60% 100・150・200・300・400・500%
第1種住居地域 第2種住居地域 準住居地域 50・60・80% 100・150・200・300・400・500%

<商業系>

用途地域 建ぺい率 容積率
近隣商業地域 60・80% 100・150・200・300・400・500%
商業地域 80% 200・300・400・500・600・700・800・ 900・1000・1100・1200・1300%

<工業系>

用途地域 建ぺい率 容積率
準工業地域 50・60・80% 100・150・200・300・400・500%
工業地域 50・60% 100・150・200・300・400%
工業専用地域 30・40・50・60% 100・150・200・300・400%

理想の住まいを手に入れるためには、まずは土地を知ることからスタート。建ぺい率と容積率から、どのくらいの大きさの家が建てられるかが見えてくると、その先のプランニングがスムーズに進みます。

監修/米倉拓生(一級建築士、アトリエT+主宰) イラスト/三上数馬