家づくりのために「いい土地」と「悪い土地」を見分けるには、どうすればいいのでしょうか?土地を購入する前に知っておきたい基礎知識と注意点について解説します。教えてくれたのは、「OCM 一級建築士事務所」を主宰する大島健二さん。ヘタをすると、購入後に隣人トラブルに発展することもあるという土地問題。災害リスクの観点でも気になりますよね。

土地探しをしている夫婦
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目次:

知っておきたい地目と用途地域気になる購入前に地盤の質を知る方法境界杭が思わぬトラブルの種になることもハザードマップに注目すべし!駅チカ? スーパーは? 住環境もしっかりチェック「いい土地」「悪い土地」の見極めのために、現地でしっかり確認を

知っておきたい地目と用途地域

土地を探すときに最低限チェックしておきたいのは、その土地の「地目」と「用途地域」です。

地目とは?

  • 土地の用途による区分のことで、住宅を建てる場合、注意すべきは田・畑・公衆用道路などではないかどうか。田・畑は農地法、公衆用道路は道路法で建築の制限がかけられている。
  • 地目の種類は23種類。それぞれ建築の制限が違う。

よって住宅を建てる場合、基本的には宅地を取得するのがベストです。

用途地域とは?

  • 市街化区域で建築できる建物の種類、用途の制限を定めたルールのこと。
  • 市街化調整区域は建築自体が制限されていることが多く、金融機関の担保評価も低いため、住宅用の土地としての購入には十分な注意が必要です。

用途地域の種類は、大きく分けて、住居系の地域、商業系の地域、工業系の地域の3つに分けられますが、工業専用地域以外は住居を建てることができます。
ただそれぞれ周辺環境に違いがあるので、その点も注意してみてください。

建ぺい率、容積率とは?

  • 土地の面積に対して、建てられる住居の面積の割合を表すのが建ぺい率・容積率。
  • 建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の比率、容積率は敷地面積に対する延べ床面積の比率を%で表す。

一見同じように見える住宅地でも、用途地域によって建てられる面積は変わってきます。

小さい土地でも建ぺい率、容積率が大きければ、それより広い土地と同様あるいはそれ以上の延べ床面積を確保することができる場合もあります。

また家を建てる際には、法規上、道路と2m接していなければならないことも覚えておきましょう。

地目の例とその法的定義

住宅地のイメージ

haku / PIXTA(ピクスタ)

宅地は、建物の敷地およびその維持、もしくは効用を果たすために必要な土地のこと。安心して家が建てられます。

農地のイメージ画像

うっちー / PIXTA(ピクスタ)

田は、農耕地で用水を利用して耕作する土地という定義。農耕地を住宅に使用する場合は、農地転用の手続きが必要になります。

山林のイメージ画像

s.suzuki / PIXTA(ピクスタ)

山林は、耕作の方法によらないで竹木の生育する土地です。建物を建てることはできますが、電気、水道などのライフラインも整備されておらず購入には十分な注意が必要です。

気になる購入前に地盤の質を知る方法

購入しようと思った土地が沼や田を埋め立てた軟弱地盤だと、建てた後に家が沈下したり傾いたりする可能性があります。

それを防ぐためには地盤改良や支持層まで杭を打つなどの必要がありますが、当然そのためのコストがかかってきます。

このように、自分が買おうとしている土地の地盤を知ることはとても大切なこと。
しかし、持ち主でもないのに勝手にその土地の地盤調査することはできません。

そんなときにはこんな方法で調べてはいかがでしょうか。

  • 旧地名や古地図を役所や図書館で調べてみる。かなり手間がかかるが、土地や周辺状況に対する理解が深まる。
  • 近隣住民に聞いて回る。特に昔からある商店や寺社などに尋ねてみると土地の歴史が分かることも。
  • ネットで調べる。地盤ネットという調査会社が無料で公開している地盤カルテというサービスは、住所を入れて送信するだけでその地域の地盤の状態を点数で示してくれる。目安としては十分役に立つサービス。

境界杭が思わぬトラブルの種になることも

隣地境界のイメージ図

amosfal/PIXTA(ピクスタ)

境界杭とは言葉どおり、隣地や道路との境界線を示し、自分の土地を保全するためのもの。
ところがこの境界杭が毀損されていたりして敷地境界が曖昧なケースは意外と多く、そうなると隣家とのトラブルの火種ともなりかねません。

  • 境界が明快な比較的新しい造成地を選ぶ。
  • 測量に基づく「確定測量図」(※)を確認する。

※確定測量図とは測量士による測量図に隣地所有者など利害関係者が立会印を押したもの。図面と同時に境界杭が設置されるため、境界をめぐるトラブルが起きないような仕組みになっている。

ヘタをすると裁判沙汰になりかねない隣地境界問題。ここはひとつ、念には念を入れて確認しましょう。

ハザードマップに注目すべし!

気候変動による災害が多発する現代では、家を建てる地域の災害リスクにも注意が必要です。
管轄の役所がハザードマップを発行していれば、それは必ずチェックしてください。
洪水、高潮、土砂災害、火山などの被害予想が示され、地域の避難所も分かるようになっています。
無料で配布していますし、ネットでも見ることができます。

駅チカ? スーパーは? 住環境もしっかりチェック

購入したい土地が見つかったら業者にどんなに急かされても、以下のポイントはしっかりチェックしておきましょう。

  • 時間・曜日、晴れの日、雨の日など天候や時間を変えて何度も足を運んでみること。
  • 交通の便や学校、病院、スーパーへのアクセスなど、暮らしのインフラをチェック。
  • 回りに不快に感じるものがないかどうかといった直感もかなり大切にしたい。

「いい土地」「悪い土地」の見極めのために、現地でしっかり確認を

建築家大島健二さん

土地のことを解説してくれた、建築家の大島健二さん

土地の購入は、この先何年も何十年も暮らす場所を選ぶこと。
家づくりは建物のことを考える前に、その土地のことをしっかりと把握するに越したことはありません。
そのために、自分の目と足でしっかりと確認してみましょう。それがなにより大切なことです。

土地の価格は、利便性などによって左右します。
でもその土地の性質を知っていれば、万が一、地盤の質に問題があった場合でも、それなりの改良工事を行い安心して住めることが、今回の解説でおわかりいただけたかと思います。

監修/大島健二(OCM一級建築士事務所)
イラスト/キタダイマユ
※情報は「住まいの設計2020年4月号」掲載時のものです。