東京郊外に暮らす市川さん宅は、30代の夫婦、11歳と8歳の子どもの4人家族で暮らしています。家づくりのため購入した土地は東西に長く、17坪強という限られた面積でした。そこで、この敷地をムダなく生かすため、夫妻は本当に必要な要素を見極めて家づくりに取り組みました。どのように計画し、どのような工夫をしたのかとても気になるところ。そんな市川さんの住まいをご紹介しましょう。
すべての画像を見る(全10枚)「住宅ローンを組むなら、年齢的に今しかない」
市川さん夫妻が家づくりを考え始めたのは、以前住んでいた賃貸物件にストレスを感じていたことがきっかけでした。
それに加えて、当時30代後半だった夫は、「住宅ローンを組むなら年齢的に今しかない」と考えたといいます。
住宅ローン審査に通りやすくするためには、若いうちに契約するのがベスト。この年齢的なタイミングを夫妻は重視しました。
土地は以前の住まいからそう遠くない場所で見つけ、設計は妻の友人から紹介されたストレートデザインラボラトリーの東端桐子さんにお願いすることに。
「東端さんのつくる家のテイストがとても好みでした。でもそれ以上に、建築士の東端さんの気さくな人柄に惹かれ、すぐに依頼を決めたんです」(妻)
約10坪の2階全体を、光と風を感じるLDKに
夫妻が希望したのは、開放感のあるLDK、壁付けキッチン、土間、ビルトインガレージなどです。以前の家ではカーテンを付けずに生活していたことから、自然の光と風に包まれる住環境で暮らしたいと望み、明るさと開放感を求めました。
そこで、東端さんは1階にガレージと水回りを集約し、2階フロアすべてをLDKで構成したプランを提案。LDKには、トップライトや東・西・南に設けた窓から、時間によって異なる光が差し込みます。日中はグレーがかった白い壁に光が反射し、フロア全体を明るく包み込んでくれます。
さらにロフトの北側の床を抜き、吹き抜けにしたことで開放感も得ることができました。
キッチンは「料理に集中したい」という妻の思いから壁付を希望。「キッチン正面の窓からは隣家との間から空が見えて、とても気持ちがいいんです」と妻。
家具もお気に入りのものをセレクトしました。
大きなダイニングテーブルはTRUCK FURNITUREのもので、このテーブルに合わせて空間のサイズを計画したそうです。ソファも同じブランドで。床は家具の素材感に合わせて、オーク無垢材を選んでいます。
個室や収納は必要最小限に抑えたシンプルな構成に
次に、17坪強の敷地に家族それぞれの個室をどのように計画したのか見てみましょう。1階はガレージと水回りのほか、夫妻の寝室があります。では子ども室は?
「もともと、個室はなくてもいいぐらい、と考えていました。予算がたくさんあるわけではなかったので、家族4人が普通に暮らせるだけの必要な要素でいいと思っていたんです」(妻)。
「とはいえ、ウチは男女の兄妹ですから、小さくても個室は必要と思い直し、ロフト階に2つの子ども室を設けました」。
東と西の2つの子ども室をつなぐ部分は、子どもの勉強スペースとしてカウンターデスクを造作。現在は、音楽が趣味という夫のDJブースとして活用しているそう。コンパクトながらゆとりの空間もしっかり確保しています。
子どもたちが独立したら、ロフトは夫妻それぞれの趣味部屋として使うことも検討しているそう。
「以前から不要なモノは持たなかった」という夫妻。収納スペースも必要最小限に抑えてデザインもシンプルにすることで、省コスト化を実現しています。
他にも、DIYで天井、壁、床をオイル塗装をするなどしてコストダウン。
こうして、敷地面積17坪強、延床面積約22坪の中に、家族4人が暮らす十分な空間を得ることができました。
住宅ローンを組むタイミングを考慮し、家づくりを決意した夫はこう語ってくれました。
「40代だとローンの利用は遅すぎるし、20代では自分たちの生活に合う家のつくり方が見極められていませんでした。好きなモノやスタイルが分かるようになった30代だからこそ、ベストな家づくりが実現できたのだと思います」。
※情報は「住まいの設計2020年4月号」取材時のものです
設計/ストレートデザインラボラトリー
撮影/中村 晃
取材/松林ひろみ